3分解説/決算書で分かるMicrosoftの隠された真実/公認会計士による徹底解説

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はじめに

・決算書サマリーでは見えなかった、Microsoftの隠された真実を解き明かしていきます。

【ここに注目】
①データセンターのAzureの成長性の高さと今後
②史上最大規模(現金)で買収したゲーム会社とゲーム事業の展開

・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。
出典:会社資料より筆者作成

どんな会社?

【社歴と製品歴】
1975年:ビル・ゲイツとポール・アレンが創業
1985年:パソコン用OSのWindowsを開発
1990年:Microsoft Office(Windows向け)を販売
2001年:家庭用ゲーム機のXboxを販売
2010年:クラウドサービスとしてAzureを開始

【売上ポートフォリオ】
法人向けサービス、クラウド(Azure)、個人向けサービスの3つのセグメントから
構成されポートフォリオはバランスがとても良い。
Microsoftのポートフォリオ:筆者作成

着目すべき指標

・営業利益率が驚異の42%となっている。なお、営業利益率が5年平均で7%改善しており、2017年の30%から12%も改善しているから驚きだ。

・売上成長率が5年平均で15%、2022年は18%となっており、まだまだ成長している。

(考察)営業利益率については、2021年は41.6%、2022年が42.0%となっており、さすがにこれ以上、営業利益率を継続して上昇させていくには限界があると思われる。

出所:会社資料より筆者作成

セグメントを深堀りしてみると

・Azureを含むクラウド事業は売上成長率が25%と全体をけん引している。会社全体の売上のうち、クラウド事業が占める割合は、2021年に35.7%だったものが、37.9%へ増加している。この傾向は継続すると見込まれるが、一方でAzureの失速がMicrosoft全社の失速につながる可能性もある。

・個人向けサービス事業が失速しているが、それでも成長率は10%をキープしている。

(考察)意外だったのが、法人向けサービス事業の営業利益率が47%とトップ(下図の青)であったことである。クラウド事業の利益率が一番良いと思っていた。この点、決算書の説明欄に法人向けサービスはofficeクラウドへの移行が進んだと記載があった。ウェブ上で完結することで余計なコストを削減できていると想定される。

・クラウドサービス事業には、Azure以外のサービスも含まれているため、中身を詳細分析してみた。Azure関連のみを取り出すと前年比+45%となっている。クラウドサービス事業全体だと、25%伸びだが、Azureの成長はさらに期待できる。深掘りしてみるものだ。

筆者作成 単位:億円

Azure(Microsoft)とAWS(Amazon)の比較

・MicrosoftのAzureがAmazonのAWSを猛追し、Microsoftは、リーディングシェアをとると公言している。

・canalyが調査しているレポートによると、2018年時点のAWSのシェアは31%、Azureのシェアは18%であったのに対し、2022年2Q時点ではAWSが31%、Azureが24%となっている。市場全体も大幅に増加しているため、単純比較はできないが、AWSのシェアは変化がない一方で、Azureは6ポイントもシェアを増加させており、この4年間でかなりシェアを伸ばしてきている。

(考察)データセンターの入れ替えとなるとかなり大規模な改修となるため、なかなか他社製品へ置き換えるというわけにはいかないため、AWSのシェアトップはしばらく継続すると思われる。ただし、AzureはMicrosoftの既存サービスとの連携やオンプレミスサーバー(会社内のサーバー)との親和性が高いことが評価されているため、数年後にはトップが入れ替わっている可能性もある。

(考察)Microsoftは、サーバーとネットワーク機器の耐用年数を4年から6年に延長すると発表した。これは顧客の営業利益率を改善させるだけでなく、顧客のインフラ投資サイクルを長くすることにつながるため、Azureの評価が更に高まることを意味している。

史上最大規模の買収劇

・Microsoftは、Activision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)というゲーム会社を、7兆円超(687億ドル)で買収することを2022年1月に発表した。

・この買収は2023年度中に完了し、Microsoftはテンセント・ソニーに次ぐ世界第 3 位のゲーム企業となる。

・Activision Blizzardの主なゲームは、Warcraft、Diablo、Overwatch、Call of Duty、Candy Crushがあり、プレイしたことがなくても、いくつかは聞いたことがあるのではないか。

・Microsoftの買収は現金で行われ、現金で取引されるM&Aの過去最大規模と言われている。これは、Microsoftが営業キャッシュ・フローが潤沢であるため成せる技である。

・B/S(貸借対照表)を見ると、現預金と短期債券(Short-term investment)の合計で10兆円超を保有しているが、これに加えて、2022年だけで営業キャッシュ・フローが8兆9,035億円もある。まだまだM&A案件が続いても全く影響がないくらい潤沢な資金がある。

出典:Microsoft HP

Activision Blizzardの決算を見てみよう

・営業利益率は20%、営業キャッシュ・フローは840億円(6か月分)とまずまずの内容であるが、売上が1,644億円と前期比28.3%減となっている。

・売上について、前年度はコロナ需要でゲーム業界が活況だったため、2022年の売上の減少は想定できるが、コロナ前の売上水準1,750億円(2017-2019のQ平均)と比較しても低い売上となっている。

出典:activision-blizzard HP

ゲーム事業の現在(苦戦中のXbox)

・ゲーム機は、ニンテンドーswitch、プレイステーション、Xboxが挙げられるが、それぞれのシェアは2022年現在では、74.5%、14.6%、10.8%(VGChartz調べ)とXboxは最下位となっている。

・Microsoftの個人向けサービスのセグメント全体の売上成長率は10%であるが、Xboxとそのコンテンツの成長率は3%となっており、セグメントの足を引っ張っている。

(考察)ハードのXboxが売れていない今、なぜ、ゲーム会社の買収なのか。この点、ゲームが固有のゲーム機に依存しないで、色々なゲーム機、PC、モバイルで楽しめるようになっている。そのため、ゲームのハード/ゲーム機(プラットフォーム)で強みを出すのではなく、ソフトで強みを出す方が良いと判断したように思える。ピボットができる会社は強い会社だ。

(考察)Activision Blizzardのプラットフォーム(ゲームをする端末)毎の売上を見てみると、Console(家庭用ゲーム機)、PC、モバイル向けとバランスが良い。また、Activisionから右にkingまで名前が記載されているが、これはM&Aで会社が合流したことを意味している。

出所:会社資料を筆者加工

ゲーム事業の未来

・(考察)Activision Blizzardの年間売上は8,000億円程度であるため、個人向けサービスの年間売上6兆円に与えるインパクトは大きいが、Activision Blizzardの営業利益率が20%と低いことから、合流した直後は多少ネガティブな反応になる可能性も想定される。

(考察)ゲーム業界は、単なるゲームだけではなく、eスポーツというジャンルも確立しつつある。一説によると、eスポーツの観客は7億人を超え、さらに増加傾向である。また、メタバース社会で一番伸びる事業はゲーム業界と言われているため、Microsoftも単にゲーム事業へ投資するというのではなく、メタバース事業での覇権を取りに行っているものと考える。この点、ゲーム機ハードのライバルである、任天堂とSONYは静観している状態である。

おまけ

・ドル高で、海外向け製品の売上が伸び悩んでいるということで、利益警告があった。現状ではそこまで影響はでていないようにも見えるが、今後の展開を注視していく。

・潤沢な資金を活かして、自己株式の取得を継続している。また、その額を2兆2,968億円/2020、2兆7,385億円/2021、3兆2,696億円/2022と徐々に増やしている。

おわりに

(まとめ)成長率、営業利益率、ポートフォリオ、財務健全性が完璧である。Azureの伸びが際立っているが、ゲーム事業/メタバース事業の成長が楽しみである。

・最後まで、お読みいただきありがとうございます!

・この点をもう少し詳しく解説して欲しい、解説して欲しい他の会社などありましたら、お気軽コメントください。お待ちしています。

・シリーズ化してお届けしていますので、コメントなどで反応してもらえたら、更新の励みになるので、お願いします。

・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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