3分解説/決算書で分かるオクシデンタル・ペトロリウム(OXY)の隠された真実/公認会計士によるここだけの徹底分析

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エネルギーセクター
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はじめに

図1 出典:会社資料より筆者作成
・決算書サマリーでは見えなかった、
オクシデンタル・ペトロリウム(OXY)の隠された真実を解き明かしていきます。

【ここに注目】
①どこに強みがあるのか
②バフェットに追随して株を購入するのか

・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。

どんな会社?

【社歴など】
1920年:創業
2019年:バークシャーハサウェイからの資金調達
2019年:アナダルコを5兆7,000億円で買収(競合大手シェブロンに勝利)

【事業ポートフォリオ】 ①売上の84%を占める石油&ガス事業、②16%を占める化学事業、③その他事業として、エネルギーの輸送、貯蔵、マーケティングを行う事業がある。①の事業では石油、LNG、天然ガスを生産及び販売している。アメリカ国内の生産地比率が高いことが特徴で、アメリカでは最大級の石油生産会社である。

図2 会社資料より筆者作成

原油価格、天然ガス価格と連動する株価と業績

図3 出典:楽天証券ツールにより、筆者作成(2017年8月時点を0(出発点)として、その後の価格の変動を示した)

 2017年から2022年の5年間で、原油(赤)、天然ガス(緑)、OXYの株価(青)を比較してみると、ほとんど連動していることが分かる。

 また、【図2】で5年間の業績を見ると、2019年、2020年の営業利益がほぼ0、マイナスになっている。この点、原油と天然ガスのチャートを見てみると40ドルから50ドル付近を推移しており、一時16ドル台まで落ちていた時期もあり、業績についても原油及び天然ガスの価格と連動している。

 現状では、原油が90ドル~110ドル付近を推移しているため、増収増益となるが、原油の価格が下落してくると、減収減益になるため注意が必要だ。この点、OXYのガイダンスでは、原油価格が40ドルでも配当を出せる筋肉質な体制となっているとの発言もあったため、スワップなどを利用して若干は影響を回避できる体制が構築できている可能性はある。

 原油価格については、当面100ドルを挟んだ展開となると想定されている。上振れ要因としては、ロシアから欧州へのガス供給が減少していることが挙げられる。一方で下振れ要因としては、世界景気悪化懸念で、原油の消費量が減るとの思惑から価格が下落することである。

どこに強みがあるのか

 まず、2022年2Qの決算は1Qに続き、素晴らしいものだった。2022年2Qの売上成長率は前年同期比51%となり、営業利益率も36.3%と驚異的数値となっている。また営業キャッシュ・フローも5,148億円と、着実にキャッシュを稼いでいる。ただし、上述のとおり、原油価格の上昇に支えられている側面が強い。

 OXYの強みの一つは、生産地の立地であろう。埋蔵量ベースだと、75%がアメリカ国内(パーミアン盆地とロッキー山脈、メキシコ湾含む)、25%がアメリカ国外となっている。またアメリカ国外についても、オマーン、UAE(アラブ首長国連邦)、アルジェリアと比較的紛争が少ない地域に位置している。仮に、地政学リスクが高まったとしても、アメリカ国内の比率が高ければ、供給維持が可能ということが強みだろう。なお、OXYは、アメリカとリビアの国交断絶から、リビア内の資産を没収され撤退した過去もあり、競合の石油メジャーと比較してアメリカ国内の比率が高くしているものと推測される。

 バフェットは割安株に投資するイメージがあると思うので、同じバフェット銘柄のシェブロン(CVX)と割安の判断指数を比較してみる。PSR(株価と売上の倍率)はOXY2.4倍、CVX1.97倍、PERはOXY33倍、CVX19倍、PBRはOXY6倍、CVX2.1倍となっており、OXYの株価が70ドル付近ではシェブロンの方が投資妙味があり、現時点では割安株とは言えない(2019年に初めてバフェットが購入した時期が割安だった)。

 なお、ガイダンスで有利子負債10%台後半になったら、負債の返済にキャッシュを使うのではなく、配当へ回すことを重視し増配も予定しているとのアナウンスがあった。ただし、仮に以前の3ドル台の配当へ戻ったと仮定しても、配当利回りは2%であり、これもCVXの配当利回り3.5%と比較すると見劣りしてしまう。

 炭素回収技術が、SDGsに即していて、環境負荷を抑えるので素晴らしいことかと思うが、それだけでは、株価が70ドル以上というのは説明はつかないのではないか。

 原油の場合、作ったら売れるというものではないので、強みというものではないかもしれないが、2021年と比較して、日量約10万BOE増の生産量の確保し、2022年末には、平均で約120万BOEとなるとガイダンスされている。価格が上昇し販売量が増えれば、増収増益になることは想像に難くない。

 直近の決算は素晴らしいものの、決算書やガイダンスを深読みしても、個人的にはOXYの強みが浮かび上がってこない。やはり原油価格に依存している面が強い。もう少し、決算なりガイダンスを追いかける必要がありそうだ。

バフェットに追随して購入するか?

出典:楽天証券HPツールより、筆者作成加工

 まず、バフェット(バークシャーハサウェイ)は2019年にかなり安い株価で仕込んでいる。しかも優先株式で1兆円(100億ドル)を出資している。優先株式は、市場で出回っている他の株式とは異なる取り扱いを行うことができるもので、今回は配当金を8%付けるものである。つまり、バフェットは2019年時の株価を上回って推移している限り、キャピタルゲインも得られ、インカムゲイン(配当)も得られるというスキームになっている。

 上の図の赤い丸がバフェットが買い増しているポイントである。買い増しは13回(大量保有報告書はSECファイルのFORM4から取れる)にも及び、2022年8月8日時点で、保有比率が20.2%となり、さらに、米連邦エネルギー規制委員会は、普通株式を50%取得することを承認したと8月19日に明らかになった。

 上の赤い点を見てもらうと分かるのだが、明らかに一定の水準で買え支えていると推測される。買いを入れている水準は60ドル付近だ。バフェットが、この水準をキープしたいのには理由がある。その理由は、バフェットは優先株式の他に、普通株式8,390万株を50億ドルで購入するワラント(権利)を持っている。この権利の価格を単純計算すると、59.6ドルとなる。つまり、この株価水準(60ドル)以上になってくれないと、ワラントの旨味がないわけだ。

OXY株を購入するのであれば

 もし仮にエントリーするのであれば、市場全体が落ち込んで、60ドルを大きく下回った時か、ゆっくりと下がってきて60ドル付近をウロウロとする時であろう。ただ、バフェットが50%まで買い進めるという思惑もあり、右肩上がりに株価が上昇してしまう可能性もあるが、その時は、見守るのが賢明だろう。

 バークシャーハサウェイの投資戦略にバフェットが大きく関与していない銘柄もあることが判明している。また、バフェット銘柄だと思っていた金鉱株のバリック・ゴールドにおいては、ささっと売り抜けていたこともあった。

 このため、バークシャーハサウェイが買った銘柄は全て長期保有されることだけを理由として、バフェットに追随するのは少し危険かと思われる。アメリカのeia(米エネルギー情報局)によると、原油の価格が当面100ドル以上をキープし、高値で170ドル(底値は45ドル)になると言われている。このため、原油価格の暴騰を想定してOXY株を購入しているのだとしたら、原油価格が50ドル付近まで落ちてきたら、売り抜けている可能性もあるので注意が必要だ。原油価格が高止まりしている間は問題ないが、下がってきた時に、同じような業績が出せるのかウォッチする必要がある。

 なお、バフェットは金は何も生まないものだと公言しているため、バリック・ゴールドはすぐ手仕舞いしたが、同じ石油銘柄のシェブロン(CVX)も購入していることもあり、エネルギーセクター自体は守備範囲であるため、長期保有を考えていると想定する。

おわりに

・最後まで、お読みいただきありがとうございます!

・この点をもう少し詳しく解説して欲しい、解説して欲しい他の会社などありましたら、
 お気軽コメントください。お待ちしています。

・シリーズ化してお届けしていますので、シェア、コメントなどで反応してもらえたら、更新の励みになります。

・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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