分割前後の徹底分析/(J&J)ジョンソン・エンド・ジョンソンを3分解説/公認会計士によるここだけの分析/お宝株発見で寝るだけ投資

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ヘルスケアセクター
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はじめに

図1 出所:会社資料より筆者作成
・決算書サマリーでは見えなかった、ジョンソン・エンド・ジョンソン
(Johnson & JohnsonJ:JNJ)の隠された真実を解き明かしていきます。

【ここに注目】
①日用品事業をスピンオフした影響
②営業利益率と成長可能性と
③高配当の継続

・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。

どんな会社?

 ヘルスケア関連商品の製品の研究開発・製造・販売を行う会社で、①日用品(CONSUMER HEALTH)、②医薬品(PHARMACEUTICAL)、③医療機器(MEDTECH)、の3つの事業を展開している。①の日用品事業については、スピンオフする計画が発表されている(なお、スピンオフがいつになるかはまだ明らかされていない)。①の日用品は、バンドエイド、リステリンなど馴染みのスキンケア、一般用医薬品、ベビーケア、オーラルケアなどの数多くの商品がある。②も数多くの薬を販売しているが、「ステラーラ」や「イムブルビカ」が代表的な薬である。③には、自動縫合機のみならず、カテーテルやコンタクトレンズのアキュビューも含まれる。

 ※年間の決算書は2019年12月期の次が2021年1月期と決算期がズレているが、年号は読み易いように補正している

図2 出所:会社資料より筆者作成

日用品事業のスピンオフの影響

図3 出所:会社資料より筆者作成

 日用品事業のジョンソン・エンド・ジョンソン全体の売上に占める割合は16%(2022/2Q)である(この割合は過去5年間の平均16.9%と比較してしても大きな変動はない)。この日用品事業部分がスピンオフされると、全体売上のうち84%が新J&Jとなり、新J&Jの年間売上は8兆円規模の会社となることが想定される。上図3の棒グラフは、日用品事業を除いた医薬品事業と医療機器事業の合計の売上や営業利益であり、過去5年間においては、急成長はないが安定した経営となっていることが分かる。

 下の図4の日用品事業の営業利益率の推移をみていると、5年平均で10%であり、2018年以降下図のように推移している。営業利益率が年々下落しているのに加えて、2021年には営業赤字となっている。これは、訴訟案件の費用が生じている影響が大きいが、2022年2Qの直近の決算の営業利益率は21%に回復していることが分かる。

 一方で、日用品事業を除いた、医薬品事業と医療機器事業合計の営業率の推移は、概ね30%を超えており安定している。

 つまり、今回のスピンオフで、より利益率の高い事業のみをジョンソン・エンド・ジョンソンに残すこととなる。ただし、医療品事業の営業率は5年平均で30%なのに対して、医療機器事業の営業利益率は5年平均で18.8%となっており、若干医薬品事業の足を引っ張っている形となる。

図4 出所:会社資料より筆者作成

今後の成長可能性

 日用品事業単体の成長率は5年で8%の伸びとなっており、平均すると年1.6%となっている。一方で、医薬品の成長率は5年で44%、医療機器事業の成長率は5年で2%となっており、平均するとそれぞれ、年8.8%、年0.4%となる。

 この点、直近の決算の成長率は、日用品事業が▲1.2%、医薬品事業が6.7%、医療機器事業が▲1.1%となっている。スピンオフ後の事業ポートフォリオは、医薬品事業が66%、医療機器事業が34%となっていることを考えると、営業利益率も成長率も高い医薬品事業が、引き続きJ&Jの業績を牽引することと想定される。

 2021年に医薬品事業が若干落ち込んでいるので、補足をしておくと、売上が⼤きかった「レミケード」の特許切れが生じたため、伸び悩みが生じていた。直近では売上が大きい薬で特許切れのあるものはないため、安定した売り上げが見込まれる。さらに、年度決算のパイプラインによると、うつ病に効くエスケタミン/SPRAVATO(イーライリリー社のプロザック(1987年-)以来の薬で、即効性があり治療法を劇的に変える力があると言われている)を中心として、新薬の候補も有力であると言われている。

連続増配の今後の行方

 59年間継続してきている連続増配が今後どうなるかが、気になるところだろう。結論からいうと、連続増配は継続されると想定する。

 まず、ファンダメンタルズの点からみると、流動負債が4兆4千億円に対して、流動資産が6兆3千億円と財務は健全かつ、営業キャッシュ・フローも9,600億円(6か月)もあるため、配当余力は充分かと思われる。

 次に、連続増配することで、配当貴族指数入りしている。指数に組み込まれるか組み込まれないかで、株価のパフォーマンスも変わってくるため、指数入りを維持するものと思われる。

 S&P500の配当貴族指数の連続増配のカウント方法は2013年に変更になっており、分割された場合、分割割合に応じて分割前の配当金が引き継がれていれば、連続増配が継続されたとみなすとされている。分割しても連続増配のルールが適用された例としては、アッヴィ(ABBV)とアボット・ラボラトリーズ(ABT)がある。

 スピンオフは2021年11月に発表されたが、分割まで18か月から24か月要するとされており、分割割合などはまだ公表されていない。売上割合から現状の1株を新J&J5株と別会社1株へ分割し、新J&Jのみ配当を継続したと仮定すると、現状2.7%の配当利回りが2.25%となる(最悪のケース、別会社が配当しないと仮定)。成長率が年6-8%とすると、まずまずの配当利回りと思われる。

いつ購入するか

 ジョンソン・エンド・ジョンソンについては、何点か懸念事項がある。列挙すると、ドル高で通期利益を引き下げ、発がん性物質が含まれる可能性がったベビーパウダーの販売終了、医療用薬のオピオイドの訴訟により売上減が見込まれる。

 7月19日に発表された通期利益の見通し引き下げを受けて、株価は下げてきている。内容は1株利益見通しを10.00ドル~10.10ドルとし、従来予想の10.15~10.35ドルから下方修正で、1.4%程度の修正であるが、株価はそれ以上に反応している。売上で考えると、9兆8900億円から10兆400億円を計画していて、ボトムの9兆8900億円で考えても、2022年1月期の9兆3,775億円からは5.4%成長している。

 なお、スピンオフ後の新会社の売上規模は2022年で8兆4千億円程度と想定される。これは、2021年1月期の売上規模(スピンオフ前)と同程度である。2021年の株価は160ドル以上で推移していたため、スピンオフする別会社が全くの無価値と仮定したとしても、現状の株価と釣り合う水準である。そのため、160ドル付近であれば、インカムゲイン(配当)とキャピタルゲイン(株価上昇)を加味すると、購入を検討しても良いと思われる。

 また、PERで見ると過去5年平均が24.9%であり、2022年1月期の実績と直近株価からのPERは21.1倍となっており、過去平均と比較すると若干割安感は出てている。

 ただし、短期では、利上げ&量的引締(QT)の影響で、株価が乱高下する可能性があるため、購入して良いのは、3年以上保有する中期または長期目線で考える場合のみである。

出所:楽天証券ツールにより筆者作成

おわりに

・最後まで、お読みいただきありがとうございます!

・この点をもう少し詳しく解説して欲しい、解説して欲しい他の会社などありましたら、
お気軽コメントください。お待ちしています。

・シリーズ化してお届けしていますので、シェア、コメントなどで反応してもらえたら、
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・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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