ヘルスケアセクターの異端児ダナハー(DHR)を3分解説/公認会計士によるここだけの徹底分析/お宝株発見で寝るだけ投資

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米国企業の解説
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はじめに

  • ベア局面でも強いヘルスケアの中でも、圧倒的な成長を続けるダナハーについて検討してみたいと思います。
  • いつも3分解説なのですが、ダナハーは少し混みあっているので、5分解説になっているかもしれません、ご了承を。

【ここに注目】

  • ①M&A会社再建のダナハー・ビジネス・システムの凄さ
  • ②環境セグメントの分社化
  • ③直近のM&Aとダナハーの将来性

 決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。

出所:楽天証券ツールにより筆者作成

どんな会社?

出所:会社資料より筆者作成

 ダナハーは、20社以上の事業会社からなる時価総額20兆円のグローバルファミリー企業であり、①ライフサイエンス、②診断、③環境の3つのセグメントからなる。①ライフサイエンスセグメントでは、病気の原因の解明、治療法の発見、新薬やワクチンの試験・製造のための遺伝子、タンパク質、代謝産物、細胞など幅広い機器と消耗品を提供している。②診断セグメントは、病院、診療所、検査センター、医療施設に向けて、疾病の診断や治療方針の決定に使用される臨床機器、試薬、消耗品、ソフトウエアなどを提供している。③環境は、水質関連事業と、製品識別事業からなる。水質関連事業では、超純水、飲料水、工業用水、排水、地下水などを分析、処理、管理するための装置、消耗品、ソフトウェア、サービス、殺菌システムなどを提供する。製品識別事業では、コーディング、トレーサビリティなど、様々な用途に対応する装置、ソフトウェア、サービス、消耗品を提供している。

 ダナハーは不動産会社として1984年に設立され、当初は個別の製造事業のグループで構成されていたが、経営状態の悪い製造業者を買収し再建する方がより利益が出せると判断し、M&Aを中心とした成長に切り替え、数百社のM&Aを行った後に今の形態となる。詳細は後述するが、③環境セグメントについては、イース(EAS)として分社化すると、2022年9月に発表されている。

出所:会社資料より筆者作成

DBS(ダナハー・ビジネス・システム)の神髄と凄さ

 1980年代初頭、スティーブン・ラレスとミッチェル・ラレスが、継続的な改善と顧客満足に専念する新しい種類の製造会社を構想した、釣りの旅行先が、ダナハー(モンタナ州西部のサウスフォークフラットヘッド川の支流)だった。語源の「ダナ」は古代ケルト語で「速い流れ」を意味し、その後のダナハーの機敏な考え方と急速な革新の流れを示すこととなる。

出所:公式会社HPより

 ダナハーには5つのコアバリューが掲げられており、その一つが「KAIZENIS OUR WAY OF LIFE」である。この「KAIZEN」は改善である。これは、トヨタ自動車出身であり、ハーバード大学で世界に日本の品質管理を教えていた岩田芳樹氏と中尾千尋氏を招聘したことを契機に、日本企業のKaizen(カイゼン)の手法を導入し、受け継がれているものである。この「KAIZEN」を中心に、ダナハービジネスシステム(「DBS」)が作り上げられた。DBSでは、調査結果を反映した戦略を立案して、人材育成・組織文化を構築して、ベストパフォーマンスを出すということだ。下の図は、ダナハーの会社概要に載っているプレゼンテーションであるが、ここに要旨がギュッと詰まっており、マッキンゼーの7S戦略に通じるところがある。

出所:会社公式HPより

 ダナハーのは、数々の企業を買収しているが、DBSを通じてそれらを改善し、その後も企業を保持することによって、40年以上にわたって目覚ましい成長を遂げている。プライベート・エクイティ企業と捉えられる向きもあるが、ダナハーは企業を再建して、すぐに売却するのではなく、長期的に保有している。

出所:会社公式HPより

 ダナハーがM&Aとその後の戦略において重視することが、上の図にある。教科書的ではあるが、筆者が着目するのは、「Higher barriers to entry(参入障壁の高さ)」「Higher margin businesses(収益性の高い事業)」、「Competitive market position(市場競争力)」、「Synergies with DHR OpCos(シナジー効果)」であり、これが守られている限り、ダナハーはより発展することが見込まれる。

 通常、これだけ多くの企業を合わせていると、組織がぐちゃぐちゃになるケースが多いが、DBSにより組織文化・コアバリューを浸透させていくことで、バラバラな企業をまとめ上げている。

 このDBSを武器に、1998年の水事業(環境セグメント)に始まり、製品識別(2001年)、診断(2006年)、ライフサイエンス(2009年)を確立させてきた。2015年以降も事業ポートフォリオは変化しており、2021年以降では、①ライフサイエンス(LS)セグメント、②診断(Dx)セグメントの比率が大きくなってきている。

環境セグメントの分社化とその影響

 2022年9月14日に③環境セグメントはダナハーから分離され、独立した上場企業とされることが発表された。新会社はダナハーの水質関連事業と製品識別事業で構成され、新しい会社名が決まるまで「イース、EAS(仮名)」と呼ばれることとなった。

 昨今、コアビジネスに関係のない事業や、成長性や利益率が低い部門が切り離されて分社化されるケースが増えており、この流れに乗り、ダナハーも③環境セグメントを分社することになった。ダナハーの成り立ちを見ると違和感がないものの、ヘルスケアセクターのダナハーとして事業内容をみると、なぜ③環境セグメントが入っているのか、理解するのが難しかったため、納得の分社化と言える。

 なお、ダナハーの売上の14%あったデンタルセグメントは、先だって2019年6月にエンビスタ社として分社化されている。当時のデンタルセグメントの成長率は2%、利益率は12%であった。

 ③環境セグメントの成長率はここ数年の平均は5%であり、2020年においては、-2%となっており明らかに成長が鈍化している。一方、営業利益率については、23%程度(図右の灰色の線)をキープしており、決して悪い数値ではない。ただし、他の2部門の成長率と営業利益率の上昇と比較すると全体の足を引っ張っており、成長率の鈍化、営業利益率が改善しないのであれば、ダナハーのコアバリューにも合致しないとも思われる。

出所:会社資料より筆者作成

 分社後の事業ポートフォリオ等のイメージを作成してみた。①ライフサイエンスセグメントが40%で、②診断セグメントが60%となっている。②診断セグメントが2020年、2021年と大きく成長し、2022年に鈍化しているのは、COVID-19用診断薬の影響がある。決算書等で商品詳細についての記載はないため想定にはなるが、COVID-19用診断薬の影響を差し引くと、成長率は15%、利益率は25%程度と考えておいて方が良いだろう。ただし、成長が止まったり、利益率が大きく悪化しているわけではない

出所:会社資料より筆者が想定し作成

 こうして、ダナハーはM&Aを繰り返し、買収した企業を再建した後、成長率や利益率が落ちているセグメントを徐々に切り離し、ピカピカに輝いているセグメントのみを残している。

 次のページでは、直近の買収した企業からみるダナハーの戦略と将来性、そして株価の推移について検討していく。

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