バフェット銘柄の高配当株/石油株シェブロンを3分解説/公認会計士によるここだけの徹底分析/お宝株発見

スポンサーリンク
エネルギーセクター
スポンサーリンク

はじめに

図1 出典:会社資料より筆者作成
・決算書サマリーでは見えなかった、
 シェブロン(CVX)の隠された真実を解き明かしていきます。

【ここに注目】
①増配を34年間継続しているが、今後の展開は? 配当利回りは?
②原油の消費量と価格について、今度の動向は?

・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。

どんな会社?

【企業概要】
 世界的なエネルギー会社で、原油や天然ガスの生産を行うほか、輸送用燃料等も製造している。開発から販売まで行う垂直統合型のビジネスを展開している。
 アメリカのみならず、カザフスタン、アンゴラ、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、メキシコ、ナイジェリア、イギリス、ベネズエラ等の世界各国で展開している多国籍企業である。

【社歴など】
1879年:パシフィック・コースト・オイルとして創業
1960年代:セブン・シスターズ言われる7社で世界の石油をほぼ独占していた(当時ソーカル社)
1984年:セブン・シスターズの一角であったガルフ石油と合併し、シェブロンへ社名を変更
2001年:テキサコを買収(社名を一時シェブロンテキサコとしたが、シェブロンへ戻している)

【事業ポートフォリオ】
 事業ポートフォリオは2つの事業から構成されている。基本的には、原油や天然ガスに関連する事業であり、「Upstream(上流)」と「Downstream(下流)」に分けられている。
 上流事業は主に、①原油と天然ガスの探査・開発・生産、②液化天然ガスに関連する加工・液化・輸送、③パイプライン(原油輸送)、④天然ガスの輸送・貯蔵・販売を行っている。
 下流事業は、主に、①原油の精製、②石油製品/潤滑油の販売、③再生可能エネルギーの製造・販売、④石油製品の輸送、⑤石油化学製品の製造・販売等を行っている。
 下図の事業ポートフォリオ円グラフは当期純利益ベースでの割合を示している。青(U.S.upstream)と緑(U.S.downstream)はアメリカに該当する部分で、アメリカと国際の比率が5:5程度であることが分かる。

図2 出典:会社資料より筆者作成

エネルギー価格に依存している業績と株価

図3 出典:楽天証券ツールにより、筆者作成

【株価】5年前をゼロとして、シェブロンの株価、原油価格、天然ガス価格の推移を比較すると、上の図となる。他の石油株も同様であるが、ほとんど、原油と天然ガスの価格と同じような動きとなる。ただし、少し面白い動きとしては、2022年夏に関しては、天然ガスの価格上昇に株価が追い付いていないことである。四半期の業績は多少タイミングが遅れて発表されるが、この価格差は埋めるような動きとなるのが通常のため、原油価格との乖離も併せて投資妙味はあるように思える。

【業績】業績についての留意点は、2020年/12月期の年間売上が9兆4,000億円と10兆円を下回り、営業利益も5,400億円のマイナスとなっている。これは、2020年に原油価格が低迷し、40ドル付近で推移したことが原因である。
 2020年以外の直近5年間の原油価格は、60ドル付近で推移しており、売上は10兆円を超え、営業利益も確保できている状態であった。
 また、2021年は原油価格が60ドルを上回って推移したため、売上が15兆5,606億円、営業利益が1兆7,382億円と桁違いの強さを見せた。現状では、原油価格が90ドル以上で推移しているため、かなり良い年間決算が期待できる。

 つまり、原油価格(+天然ガス価格)が上昇を続けている限り、良い業績と高い株価が期待できる銘柄である

今後の原油価格の展望

図4 出典:アメリカエネルギー情報局(EIA)資料より筆者作成

 上の図は、1986年から2022年(年度末を基準)、直近5年間のWTIの原油価格(/バレル)の推移を追ってみた。2009年のリーマンショック、2019年のコロナショックの際に、景気後退により大きく下がっているが、長い期間を俯瞰してみると上昇傾向であることが分かる。

 【価格】EAI(アメリカエネルギー情報局)によると、2022年の原油価格の展望は、ボトムが45ドル、アッパーが170ドルと想定している。また2023年以降の原油価格の中央値は、100ドルを上回って推移すると想定されている。

 【消費量】原油は脱炭素化の流れから敬遠される存在であり、車がEV車に移行する中で、消費量が減るようなイメージもあるが、EAIの展望によると下の左図のようになり、増えはしないが、横ばいが続くと想定されている。一方で下の右図の天然ガスの生産量と消費量は右肩上がりになると想定されている。

 確かに、アメリカの発電に要するエネルギーにおいては、天然ガスの利用が2000年と比較すると3倍近くになり、現在では、石油と天然ガスの割合が半々なっている。また再生可能エネルギーの利用なども進んでいるため、石油の利用が減少するようなイメージがあるが、利用シーンが変わるだけで、原油/石油の消費の総量は変化がないことが分かる。

【政権の方針】トランプ政権は、自国消費するエネルギーは自国で生産するという方針から、原油や天然ガスの採掘に関する規制を緩和し、さらに原油や天然ガスを運ぶパイプラインの建設を促す政策もとっていた。

 一方でバイデン政権は、環境保護を最優先課題として定め、緩和された規制を厳しい状態へ戻している。トランプ政権時代には、原油や天然ガスが供給過多になりエネルギー価格が下落していたが、これも下の左図の生産量(production)が増加しない見通しであれば、価格も横ばいか上昇が見込まれる。

図5 出典: U.S. Energy Information Administration, Annual Energy Outlook 2022 (AEO2022)

強固な体制の構築

 シェブロンは2020年に営業赤字に陥ってから、様々な改革を行い、その結果が出てきている。確かに、原油の価格が100ドル付近まで上昇したことが、業績の追い風になっている面はあるものの、下記のような改善を行ったため、強烈な営業利益が生み出せていると思われる。

 まず、販管費の削減に成功している。売上が前年同期比で2倍程度になっているにも関わらず、販管費(図のOperating expense)が16%増に留まっているのが驚きだ。この点、インフレ圧力があったが、仕事の生産性が上がっていると説明されている。

 次に、日量の生産量は増えて要るにも関わらず、固定資産(生産設備など)の減価償却費も減少している。なお、販管費に※が付いているのは、退職費用も含んでいる旨の注釈が付いている。  上記のことから、操業コストは、以前と比較して20%削減できると想定されている。

 これに加えて、細かい比較の数値は発表されていないが、シミュラックで一度に4本の井戸を完成させることを例に出して、開発コストが2019年以降、約25%低下しているとの発表もあった。

 生産性が上がって筋肉質な会社となり、原油価格が上昇傾向なら、シェブロンの経営に死角がないようにも思える。なお、2022年/1月の年次のカンファレンスコールでは、今後5年間原油価格が50ドルであっても、配当と自社株買いを継続することができると発表されている。

図6 出典:会社資料を筆者加工

配当の見通し

 34年間増配を行っており、S&P500の配当貴族指数の構成銘柄にも採用されている。また、株主還元にも積極的であり、さらに加速させると表明している。

 寄稿時点では、若干株価が高くなっているため、配当利回りは3.4%(2022年配当想定:5.67ドル)となっているが、株価上昇のキャピタルゲインも見込こむ場合は、充分な利回りだろう。

 原油価格が90ドル以上をキープしている状態で、2022/2Qの3か月だけ1兆3,800億円の営業キャッシュ・フローがあるため、配当及び増配に関しては、全く問題ないだろう。

 なお、自己株買いも継続しており、当初の買取枠が1兆円だったものが、1兆3千億円、1兆5千億円と枠を拡大させ、自己株買いによる株主還元も加速している。なお、2023年1月からは、自己株買いに1%の税金が課されるため、駆け込みも想定しておいた方が良いと考える。

 石油株を購入するのであれば、原油が下がって来ている時がベストで、原油価格が高い時には、更なる高値が見えない限りは手を出さない方が良い。景気後退が来るか来ないかの論争はあるが、来るのであれば、原油価格は確実に下がってくるので、その際に石油株を買うのが一番安全な投資となるだろう。個人的には、配当利回りが4%を超える130ドル付近なら、投資妙味はあると考える。

おまけ、バフェット関連

 同じ石油株のオクシデンタルペトロリアム(OXY)は着々と買い進めているが、すでにバフェット氏(バークシャーハサウェイ)のポートフォリオのうち、7.8%がシェブロン株となっているため、シェブロンについては直近目立った動きはない。また、シェブロンとオクシデンタルペトロリアムに投資する以前は1%台だったエネルギーセクターへの投資割合は、現在10%程度となり、かなり増えている。
 
 シェブロンとOXYの共通点は、アメリカでの生産量が大きいこと、環境に配慮した活動をしていることである。

 まず、現在の生産量は、石油・ガス生産量の合計が日量300万バレル未満であるものを、2026年までに日量350万バレルへ引き上げるとしている。その大半をパーミアン(アメリカ、100万バレル)とカザフスタンから生産されると想定されている。また、天然ガスについても、半分程度がアメリカとオーストラリアから生産されている。このため、他のオイルメジャーと比較すると、アメリカ国内での生産比率(図2の円グラフも参照ください)が高いことが分かる。

 環境に配慮した活動としては、ゼロミッションの推進(森林再生、二酸化炭素の水中封じ込め)に加えて、バイオ燃料大手のREGを3兆1,500億円で買収し、2030年までにバイオ燃料の生産能力を日量10万バレルに拡大するというシェブロンの目標達成が見えてきた。

おわりに

・最後まで、お読みいただきありがとうございます!

・この点をもう少し詳しく解説して欲しい、解説して欲しい他の会社などありましたら、
 お気軽コメントください。お待ちしています。

・シリーズ化してお届けしていますので、シェア、コメントなどで反応してもらえたら
 更新の励みになります。

・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました