クリーンエネルギー/グリーン水素のリンデ(LIN)を分析/投資環境、株価、決算の状況を分析/お宝株発見で寝るだけ投資

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エネルギーセクター
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はじめに

出所:楽天証券ツールにより筆者作成(株価、日足)
・インフレ抑制法案で一番恩恵を受けるクリーンエネルギー関連銘柄の中で
 注目されているリンデ(グリーン水素)について検討してみたいと思います。

【ここに注目】
①顕著な業績(クリーンエネルギー関連は赤字の会社が多い)
②水素銘柄のプラグパワーとの比較

・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。
出所:会社資料より筆者作成

どんな会社?

 リンデは世界最大の産業用ガスおよびエンジニアリング(プラントの設計・製造)会社である。産業ガスの主な製品は、大気ガス(酸素、窒素、アルゴン、希ガス)とプロセスガス(炭酸ガス、ヘリウム、水素、特殊ガス、アセチレン)となっている。産業用ガス製造装置の設計・製作では天然ガス、水素ガスなど幅広いガス製造・処理サービスを提供している。対象となる産業分野も下図のように幅広く、ヘルスケア(病院用の人命を救う酸素)、化学・エネルギー、製造、金属・鉱業、食品・飲料、エレクトロニクスなどにサービスを提供している。

出所:会社のアニュアルレポートより

 また、対象産業分野のみならずビジネスセグメント(地域)も、米国の割合が多いものの、特定の地域に依存しておらずバランスが良い。

 今回の記事では水素に着目した内容となっているが、クリーンエネルギーの推進と同様に米国の国策となっている半導体事業の推進にもリンデは大きく関与している。アリゾナ州では、半導体メーカーのIntelやTSMC(タイワンセミコンダクター)を初めとして、半導体関連の部素材や装置を提供するサプライヤーによる投資が相次いでいる。半導体事業には産業ガスが必須で、リンデは、TSMCの工場に超高純度窒素、酸素、アルゴンを供給する長期契約を締結している。この契約に伴い、リンデは600億円のプラントを建設し、2022年後半から稼働を開始する予定となっている。

クリーンエネルギー(水素)に注力

 さて、リンデは水素ガスの提供は行っているものの、メインは産業用ガス関連であり、クリーンエネルギーに特化しているわけではない。ただし、今後グリーン水素に注力することがHPに大きく掲げられている。特に、「戦略」としてはっきりと示されている(2022/2Q)のは、EPS(一株利益)+10%の継続成長と、クリーンエネルギーということであり、戦略の2つのうちの1つとして明確にされているされている。なお、現状の水素関連の売上は約2,000億円であり、全体の1割程度である。

 ここで一つ注目すべきニュースを紹介する。2022年9月にリンデは、ニューヨーク州ナイアガラでグリーン水素を製造するために35MW(メガワット)のPEM電解槽を建設(2025年稼働予定)すると発表した。これにより、米国におけるリンデのグリーン液体水素生産能力の2倍以上となり、米国最大の液体水素生産者となる

 リンデは、水素の生産、加工、貯蔵、流通における世界的リーダーであり、世界最大の液体水素貯蔵と輸送システムを備えている。特にリンデは、世界初の高純度水素貯蔵タンクと約1,000キロメートルのパイプラインネットワークを持っており、世界中に200以上の水素ステーションと80の水素電解プラントを有している。このため、エネルギーのグリーン水素への移行の最前線に立っている企業であると言える。

堅調な業績

 売上の推移を見ると、2018年から2019年にかけて大幅に増加している。これは、2018年10月にプラクスエア(リンデ同様ドイツの技術者であるカール・フォン・リンデが設立した会社)と経営統合したことが要因である。そのため、2019年の数値は異常値と考えて、2020年以降の数値で検討する必要がある。統合後の2020年は売上が減少したものの、2021年、2022年は年間の売上成長率は10%以上(下の右図のオレンジ線)をキープしている。

出所:会社資料より筆者作成

 営業利益率(上の右図の青線)について検討してみると、経営統合直後の2019年は10%と利益率が落ちているが、これは、経営統合に伴う費用が増加したことが要因と考えられる。その後の営業利益率は、2020年12%、2021年16%、2022/1Q18%と順調に営業利益率を増加させている。2022/2Qが7%と落ち込んでいるが、これは特殊要因で翌年以降に持ち越さないものであるため、考慮外として良いだろう。2022/2Qの特殊要因は、欧米のロシアへの経済制裁の一環で、リンデのロシア子会社を非連結化し、この費用(cachの流出はなし)として922億円計上している。タラればではあるが仮にこの費用が発生していないとすると、2022/2Qの営業利益率は1Qと同様の18%となっていた。なお、この非連結化は2022年6月に完了しているため、3Q以降には影響しないと想定している。

なぜ、水素が注目されているのか?

 結論から記載すると、米国のインフレ抑制法案で支援(税優遇)される業界、国連のSDGsなどの環境配慮政策により、水素などのクリーンエネルギーの利用が促進されるということである。詳細は下記であるが、他のクリーンエネルギー関連のところでも述べているため、飛ばして読んでもらっても良いと思う。

 EUは2021年7月、新車が排出するCO2の量を2035年までに100%削減すると発表した。つまり、ガソリン車やディーゼル車などの販売が実質禁止になることを意味している。EUは水素戦略として、2030年までに再生可能な水素の生産量を1000万tにすることを目標にしている。これらの動きから、2050年には1000兆円規模の水素経済が到来すると言われている

 水素エネルギーについて、少し補足しておくと、水素はその製造方法によって「グレー水素」、「ブルー水素」、「グリーン水素」がある。「グレー水素」は、化石燃料を燃焼させたガスを変化させたものである。「ブルー水素」はグレー水素製造工程で排出されたCO2を回収/貯蔵/利用することでCO2排出を抑えたものである。「グリーン水素」は、再生可能エネルギーを利用して水を電気分解することで製造し、製造過程でCO2を発生させないものである。CO2の排出具合は「グレー水素」>「ブルー水素」>「グリーン水素」となっている。

 さらに、先日成立したインフレ抑制法案(IRA)の存在がある。「クリーン電力」に対する税控除として、①再エネ等への生産税控除及び投資税控除の延長と対象拡大(2024年末までに建設開始したものに10年間で6兆5100億円)②CCS(CO2を回収/貯留/利用)への税控除の延長(2032年末までに建設開始したものに10年間で3,200億円)が行われたことがある。

 特に注目したいのが、①には、温室効果ガスを排出しない方法で生産された水素1キログラム当たり最大3ドル相当の水素をクリーンに生産するための税額控除が含まれていることである。グリーン水素の製造単価が現状1キログラム当たり3ドルから7ドルと言われている中で、このような税控除があるのは10年間の限定だったとしても、水素の燃料電池システムを導入することの後押しになることは間違いないだろう。

水素銘柄プラグパワーとの比較

 水素というと「プラグパワー(PLUG)」が真っ先に思い浮かぶ。そこで、リンデとプラグパワーを比較してみようと思う。リンデは水素に特化はしていないものの、水素関連の売上は2,000億円程度である。一方プラグパワーの直近の年間売上は502億円であり、リンデはプラグパワーの4倍となっており、規模ではプラグパワーを圧倒していることが分かる。

 売上成長率については、プラグパワーは2018年から2021年まで売上を2.8倍としており、さらに2022年も50%以上の成長率を維持している。一方で、リンデの成長率は直近2年間は10%超の成長を見せているが、大きく成長しているわけではない。なお、ガス毎の出荷情報が明確ではないが、水素に着目すると生産能力を大きく拡充させている。

 利益が出ていることも重要な指標であるが、プラグパワーは営業利益がマイナスの状態が継続している。一方でリンデは2桁の営業利益率を継続させている。水素は現状では、消費者や生産者にとっては他のエネルギーより高価であるため、他のエネルギーコストと比較しても優位である価格で提供できるかがポイントであるが、営業利益で赤字の会社と、黒字の会社(リンデが水素で黒字化できているかは不明)でどちらが価格優位性があるかは、明らかである。

 最後に株価の割安を図る指標のPERであるが、リンデは40倍弱である。一方のプラグパワーは利益が出ていないためPERの算出ができないが、売上の10%の利益が出ていると仮定してもPERは200倍と考えられる(EPS×PER=株価)。

 安定のリンデか、成長のプラグパワーかで好みが分かれるとは思うが、水素エネルギー株で一つだけ選ぶのであれば、私は現時点ではリンデを選択する。

株価と配当

出所:楽天証券ツールにより筆者作成(株価、月足)

 株価は、2018年10月のプラクスエアとの統合後、クリーンエネルギー銘柄として注目されていることもあるが、堅調に推移している。

 株主還元も積極的で、自己株式買いと、配当を増加(下の左図、青の棒線)させている。なお、2022年9月の配当利回りは1.7%程度であるが、配当は10%以上の増配傾向である。これを裏付けるように財務体質は改善しており、特に営業キャッシュ・フローが右肩上がりの増加をみせている。

出所:会社資料より筆者作成

 リンデは事業の特性上、爆発的に成長するという銘柄ではないが、10%の売上成長率と10%の増配が望めるのはとても優良な銘柄であると言える。PERが若干高いことが気になるが、2019年、2020年よりはPERも下落してきているため、安いところでは拾っておきたい銘柄である。

おわりに

・最後まで、お読みいただきありがとうございます!
・お好みの個別銘柄と出会えたら幸いです。
 
 水素銘柄のプラグパワーの解説はこちらから

・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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