独自記事:ドル箱のサーバー事業比較/Amazon、Microsoft、Google、IBMの各社比較

スポンサーリンク
米国企業の解説
スポンサーリンク

はじめに

  • グロース株のうち特にIT大手については、FRBの利上げと相まって業績の低迷もあり、軒並み売られる展開となっています。さらに、人件費圧縮からIT大手を中心に雇用調整が始まっています。ただし、中身を見ないで売るより、中身を見て安いところや反転するところでは買っていけるのではないか?という視点で検討してみたいと思います。
  • サーバーの提供は多くの企業が行っているが、徐々に寡占化が進んできています。また、サーバー機器を自社に備え付ける「オンプレミス」から「クラウド」への移行も加速しています。今回は米国企業のAmazon、Microsoft、Google(alphabet)、IBMを比較してみようと思います。
  • DX、Saas、AIなど、ヒトが関与しないでモノが動くシステムの構築が加速しています。また会社だけではなく、政府や個人でもデータの保存とそのセキュリティーが重要な課題となっている中で、データセンターとしてのserver事業は今後さらに伸びていくことが想定され、ここは疑念がないところでしょう。IDCのレポートにおいても、データセンター事業は今後年平均10%超の伸びが期待できるとされています。
  • 以前、記事にした4社も3Q決算が発表されたため、リライトしていますので、参考にどうぞ。
  • ※決算書と比較しやすいように、1ドル=100円と記載しています。

各社の経営指標

全体感

出所:会社資料より筆者作成

 冒頭で記載したように、データセンターの需要は拡大し、成長が継続している。2022/3Qまでの数値ではあるが、右肩上がりで成長していることが分かる。(なお、データは、4社の合計となっており、IBMについては、「Infrastructure」事業として明確に分離されたいるのが、2020/4Qからのデータであるため、以前のデータには集計上含んでいない)

 ただし、2023年には景気後退が来ると想定され、企業が設備投資を控えることから、IT投資も減少することが見込まれると報道されている。株価は将来を見越して価格を付けるため、IT大手の株価も低迷することとなっている。また、2桁成長が当たり前であったこの分野で、2022/2Q(4兆9,088億円)、2022/3Q(4兆9,146億円)を比較するとほとんど成長していないことも、成長鈍化の証左とされている。

出所:会社資料より筆者作成

 上の図が各社のデータセンター/server事業の売上推移であるが、本当に成長が鈍化するのか、各社詳細を分析してみたいと思う。なお、売上規模での順位は、1位がAmazonのAWS、2位がMicrosoftのAzure(アジュール)、3位がalphabetのGoogle-cloud、4位がIBMのハイブリッドクラウドである。

 上の図から分かることは、AmazonのAWS、MicrosoftのAzureが2強となっており、突出している。一方で、alphabetのGoogle-cloud、IBMのハイブリッドクラウドは出遅れているが、今後の成長が期待されるところである。

 以下では、各社データセンター/server事業の位置づけを見てみようと思う。

Amazon(AMZN)

 Amazonは、小売の巨人として知られるが、巨人となった今でも成長し続けているのは、ご存じだろうか。2017年に17兆円だった売上を、5年で46兆円まで伸ばしているから驚きだ。

 下記の図の、売上構成割合をご覧いただければと思うが、Amazon自体の売上は増加しているにもかかわらず、AWS(server事業)の売上割合は増加傾向にある。2019年に13%であった割合が、2022年には16%へ増加している。

出所:会社資料より筆者作成

 また、Amazonの小売事業は利益がほとんど出ておらず、AWS事業が会社全体の利益をほとんど稼いでいる。特に2022/3Qにおいては、小売が2,800億円の赤字に対して、AWS事業が5,400億円の黒字で小売の赤字をAWSが補填している状態である。また、AWSは営業利益率が30%前後である。

出所:会社資料より筆者作成

 上の図の売上推移を見ると、綺麗に右肩上がりとなっており、成長が鈍化しているようには見えない。確かに4半期毎に見ると、一時的に足踏みすることもあるが、総じて成長していることが分かる。Amazonは、小売の年末商戦、来年の景気後退による商品の販売減が嫌気されているが、AWS事業に着目すると、ここまで売り込まれるのには、少し違和感がある。

 なお、ここまで、小売とAWS事業の明暗がくっきりとしているため、他社のように、どちらかの事業をスピンオフする可能性もあるだろう。

 Amazonの詳細は、下の記事を参照ください。

Microsoft(MSFT)

 データセンターseverでは、AmazonのAWSが首位を走っているが、MicrosoftのAzureが猛追している。2018年時点のAWSのシェアは31%、Azureのシェアは18%であったのに対し、2022年ではAWSが31%、Azureが24%となっている。4半期毎の売上では、AzureがAWSを上回っている期間もあり、肉薄している状態である。

 直近の2022の数値ではMicrosoftのAzureの売上が前Qを下回ったことから鈍化が懸念されている。ただし、納期の関係で売上がズレているだけの可能性もあるため、これがトレンドになるかは注視する必要がある。下の図のように2021/1Q及び2Qにおいても、1兆5,461億円から1兆5,070億円と一見鈍化したような兆候が見えたが、成長を再開したこともあるため、基本的には右肩上がり成長を続けていると考えて良いと思われる。

出所:会社資料より筆者作成

 Amazonと同様に、Microsoftにおいても、Azureの存在感が増しており、売上比率は2018年の23.7%から2022年には34%と大幅に伸ばしている。

出所:会社資料より筆者作成

 Microsoftに関しては、Azureの利益率を公表していないが、かなり高いことが推定される。これは、上の図のように、Azureの売上比率が上昇する毎に、営業利益率も上昇していることが挙げられる。特に、2021年以降40%超の営業利益率を叩き出しているのは賞賛に値するだろう。

 なお、2022/3QにAzureの売上が鈍化したと考えられているが、営業利益率は42.9%と40%超を維持していることからも、業績に不安はないと考えている。もちろん、景気後退やドル高(世界へ売上があるため)の影響は受けることも想定しておく必要はある。

 Microsoftの詳細は、下の記事を参照ください。

alphabet(google)(GOOGL)

 GoogleのGoogle-cloudは、AmazonのAWS、MicrosoftのAzureと比較すると、若干見劣りする。ただし、ここ数年で、急成長しており、広告事業から一気にデータセンターへシフトした場合、今後、市場を席捲する可能性もある。2019年には、両社の6分の1程度の規模しかなかったGoogle-cloudであるが、2022年においては、両社の3分の1程度まで伸ばしてきている。また、年間の売上規模でも2兆円を超える規模となっているため、侮れない存在である。

 特に2021年と2022年のGoogle-cloudの成長率は40%程度である。この成長率は、今回紹介している4社の中でトップである。2022年の成長率平均(前年同期比)はAmazonが32%、Microsoftが24%、Googleが39%、IBMが10%となっている。

 Googleに関しても、Google-cloud単体の利益率を開示していないが、AmazonやMicrosoftの利益率から想定すると、かなり高いことが想定されるだろう。

出所:会社資料より筆者作成

 また、Google-cloudに関しては、2022年に入っても鈍化の兆しは見られず、右肩上がりの成長を維持していることが分かる。Googleにおいては、広告を含む「Google Services」事業の売上が鈍化したため、株価は低迷しているが、このデータセンターに着目すると、投資妙味はあるのではないか。う

 ただし、Googleにおける、Google-cloudの割合は10数%と、他3社と比較すると低いため、データセンター事業に賭けるのであれば、他社の方が良い可能性もある。

 Google(alphabet)の詳細は、下の記事を参照ください。

IBM(IBM)

 IBMに関しては、データセンター/sever事業について2020/4Q以降のみ詳細が開示されているため、古いデータがないが、直近の数値(下の図)をみる限りでは、売上が凸凹していることが分かる。先の3社については、cloud型のデータセンターとなっているが、IBMについてはcloudとオンプレミス(機器を備え付ける社内システム)のハイブリッド形式となっているのが特徴である。そのため、機器に納期によって売上が増減することが想定される。

出所:会社資料より筆者作成

 cloudを利用する場合、クラウドベースでのデータの高速処理の遅延や他社クラウド上で情報を管理するセキュリティ上の問題で、従来のオンプレミスや自社運用のクラウドも組み合わせて使いたいという顧客の要望は根強い。このため、cloudのセキュリティが問題になってくると、IBMの存在価値が浮上してくるだろう。

 ハイブリッド形式など、IBMの詳細は、下の記事を参照ください。

総括

 4社のデータセンター事業と過去の推移は把握できただろうか。昨今のデータ量はもの凄い量であり、1990年代に一生で触れる情報量が、一日で流れているくらいとも言われている。AIに学習させるためにも、過去データを蓄積させるため、データセンターに保存するデータ量が増える事があっても、減ることはないだろう。また、ITで統制される機器の増加、人口増加に伴うデータ量の増加も見込まれる。

 さて、少し前までは、HPなどにアクセスが集中した際に、『serverがダウンしてアクセスできませんでした』というニュースが多かったと思うが、最近この手のニュースが減っていることにお気づきだろうか。もともとは、オンプレミスのserverがメインだったため、この許容量を超えた場合にシャットダウンされたいたので、アクセスできなくなっていた。この点、クラウドがメインになったことで、いくらでも許容することができることとなった。ざっくりと説明すると、使用量に限りがなくなっており、使ったら使った分が請求される仕組み(従量課金制)となっている。server利用者は請求金額に驚くかもしれないが、提供する側としては楽な商売だろう。そして、serverの入れ替えは、なかなか面倒なことなので、一度入れると他社への乗り換えは余程の事がない限り行われないため、各社の売上は右肩上がりが見込まれ、明るい将来が用意されており、正にドル箱事業だ。

 金利上昇局面で、グロース株からバリュー株へローテーションが起こっている。また、常に勝者であり、主役であり続けることはないが、このまま凋落していくかというと、成長は継続されていくと思われるため、金融緩和が再開され、グロース株優位な環境になる際には、今一度各社を見てみるのも面白いと思う。

 来年は米国の選挙前年のアノマリーで、ほとんどの年が上がっているという強気派と、景気後退により更なる下落があるという弱気派が均衡している。ナズダックは、appleの決算がなんとか踏みとどまったことにより、大幅下落が避けられた。個人的にはappleが決算をミスった時が最後の下げなのではないかと想定している。そのため、IT大手のPERは低くなってきているがIT大手とグロース株が総悲観で売られるタイミングがあるのではないかと考えている。appleが決算ミスし、少し経ち相場が安定した時に、グロース株はエントリーしたいと考えている。

おわりに

  • 最後まで、お読みいただきありがとうございます!
  • この点を申し少し細かく検討して欲しいや、 他の企業を分析して欲しいなどありましたらお気軽にお問い合わせください。
  • 米国株の分析をしているので、お好みの個別銘柄と出会えたら幸いです。
  • 個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました