3分解説/決算書で分かるDisney/ディズニーの隠された真実/公認会計士によるここだけの徹底分析

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米国企業の解説
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はじめに

・決算書サマリーでは見えなかった、ディスニーの隠された真実を解き明かしていきます。

【ここに注目】
①ディズニーが赤字でもDisney+を運営する理由
②ヘッジファンドがスポーツチャンネルの分離を迫る理由

・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。
出典:会社資料より筆者作成

どんな会社?

【社歴など】
・1955年:夢の国ディズニーランドを開園
・2006年:ピクサー買収
・2009年:マーベル買収
・2019年:21世紀フォックス買収、Huluの経営権取得、Disney+を配信開始

【売上ポートフォリオ】 メディア関連が66%を占め、パークや商品関連は34%に過ぎない。2019年11月に開始されたDisney+がメディア部門をけん引するかがポイントとなる。世界最大のテーマーパーク会社であるが、売上からはディズニーランド運営とグッズ販売のというよりは、ハリウッドメジャーを抱える一大メディア会社に見える。

出典:会社資料より筆者作成

Netflixとの比較-会員数

 ディズニーの会員数がネットフリックスを上回ったというニュースが流れてビックリした方は多かったのではないか。ネットフリックスは会員数が伸び悩み3か月前から97万人減少し、2億2,067万人となっている。一方で、ディズニーの総会員数は、2億2110万人と若干ではあるが上回っている。

 (考察)ただ、決算書を良くみてみると、Disney+の会員は1億5,210万人であり、これにスポーツチャンネルのESPN+とHuluの会員数が合計されて2億2110万人となっている。広告業界によくある数字のマジックだ。そのため、このままDisney+の伸びが継続するかは注視する必要がある。事実会社からは、この四半期が会員のピークかもしれないとの発言もあった。

 (考察)ネットフリックスの会員が伸び悩んだのは、コンテンツをある程度見終わってしまったので、新作が出るまで会員登録をいったん解除する層が増えたことも原因とも言われている。この点、Disney+のサービス開始が2019年11月のため、ディズニーの会員もこのローテーション(入会/退会)に入るのかがポイントと思われる。

出典:会社資料より筆者作成

Netflixとの比較-売上と利益

 ディズニーは、3チャンネルの売上の合計が3,889億円(2022/7)となっており、営業利益はマイナスの1,061億円となっている。一方のネットフリックスの売上は7,970億円(2022/6)で、営業利益は1.578億円となっている。

 会員数の合計では逆転されているが、損益計算書の内容を見ていると、ディズニーの売上は1/2で利益もマイナスであり、これは一過性のものではない。このため、ストリーミングサービスでどちらが上手く経営しているかと問われれば、専業のネットフリックスの方が良いとも言える。

コンテンツ制作費を吸収できるか

 3か月で5,810億円のコンテンツ資産が償却(資産を費用化するタイミングが支出とズレている)されている。この費用は、償却するコンテンツ資産が2021/12月時点の2兆9,549億円から、2022/7時点で3兆4,077億円へ増加していることを考えると、今後も償却費は増加していくことが想定される。

 このコンテンツ資産の償却を費用に計上しつつ利益を出すには、会員数を倍増させるか、料金を上げていく必要があると思われる。ただし、コンテンツに関する費用は、固定費(純粋なものではない)であることから、会員数が増えれば増えるほど利益が出る仕組みとなっている。

 2022年12月にDisney+premiumの料金を7.99ドル/月から10.99ドル/月へ値上げする。また低価格の広告付きプランも用意する。ネットフリックスと同じ戦略であるが、消費者がどのように反応するかは、会員数の推移を今後も追っていく。

 パークに行けない方からすると、家でもディズニーに触れられるので、ストリーミングサービスはありがたいが、赤字でも続ける事業なのか、ディズニーのビジネスモデルを再考してみた。

出所:会社資料を筆者加工
出所:会社資料を筆者加工

注目すべき指標/壮大な仕掛け

 パークやグッズ関連部門の営業利益率は、29.5%となっている。このうち、さらにグッズ販売だけに着目してみると、営業利益率は50.6%となっており、この営業利益率の高さは毎期継続している。 グッズ販売の売上は1,183億円で全体の5%であるが、599億円の営業利益は全体の16.7%も占めている。

 (考察)メディア部門は現状薄利であり、Disney+などのストリーミングサービスは赤字である。ただし、Disney+は、パークやグッズへ集客するための広告と捉えた場合は見え方が違ってくるのではないか。つまり、パークやグッズが営業利益率が高く、こちらの部門へ集客するためにDisney+を視聴してもらっている。このように考えると、将来のディズニーファンを作るために3か月で1,000億円程度の広告費をかけていると思えば安いものと考えられる。しかも、顧客はディズニーの広告をみるために有料のサブスクに加入してくれるのだ、こんな上手いスキームは珍しい。

 2021年後半からパークやグッズ関連部門はコロナの最悪期を脱却して黒字転換している。アメリカ国内は堅調で、ヨーロッパ、アジアの回復が今後期待される。

出所:会社資料を筆者加工

サードポイントの考え

 アクティビストとして知られるダニエル・ローブ氏率いるヘッジファンドのサードポイントがディズニー株を買い増しつつ、株主提案を行った。 提案の一つにとても興味深いものがあったので、考察してみようと思う。その提案は、スポーツ専門チャンネルのESPN+分離または独立させようというものだ。確かに、ディズニーとスポーツというのは少し業界マップが離れていて、シナジーがないようにも見える。特に、上記のパークやグッズへ集客するというスキームの中では浮いている存在だ。

 (考察)ただ、サードポイントの本音はそこではないと思われる。今、アメリカではスポーツ賭博が合法がされる州が半分程度となっており、認める州が増加しており、その傾向は強まるばかりである。そのため、スポーツチャンネルと賭博を一緒にすれば、大きなチャンスがあると考えるのが自然であろう。ただし、ディズニーの理念と賭博は相反するため、ディズニーでスポーツ賭博関連を運営することは難しい。そこで、この機運が高まっている時に、別会社へ高値で売り抜ければ良いと考えているのではないかと思われる。勝手な妄想だが、的を得ているのではないかと思う。

おわりに

・最後まで、お読みいただきありがとうございます!

・この点をもう少し詳しく解説して欲しい、解説して欲しい他の会社などありましたら、
 お気軽コメントください。お待ちしています。

・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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