2022/3Q最新/決算書で分かるブロードコム/broadcom(AVGO)の隠された真実/公認会計士によるここだけの徹底分析

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米国企業の解説
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はじめに

出典:会社資料より筆者作成
・決算書サマリーでは見えなかった、
 ブロードコムの隠された真実を解き明かしていきます。

【ここに注目】
①ブロードコムの半導体事業が好調なのは、いつから?、いつまで続く?
②VMwareを買収した狙いは?

・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。

どんな会社

【社歴など】
2005年:ヒューレットパッカード/アジレント・テクノロジーを源流として、
  電子部品部門をアバゴ・テクノロジーとして分離したのが成り立ち
2016年:(旧)ブロードコムを買収し、社名をアバゴ・テクノロジーから、
 (新)ブロードコムへ変更(ティッカーシンボルは「AVGO」を継続)
2018年:クアルコム(半導体大手)の買収断念
2017年~2022年:通信機器製造のブロケード、ソフトウェア開発のCAテクノロジーズ、
ウイルス対策ソフトのシマンテックを買収し、VMwareの買収を計画中

【事業ポートフォリオ】 半導体事業とソフトウェア事業の2つがある。半導体事業は売上の77%を占め、ファブレスで設計・開発・販売のみ行っている。ソフトウェア事業は、M&Aを行うことで事業を拡大中である。 半導体事業は、ワイヤレス通信に強みを持ち、①Broadband(wifiルーター、モデム)、②Networking(データセンター、スイッチング、ルーティング)、③Wireless(携帯のRF(高周波)フィルタ、wifi、Bluetooth)、④Storage(企業/データセンター向けSSD、HDD)、⑤Industrial (オートメーション機器、車載部品)など幅広く提供している。

出典:会社資料より筆者作成

買収の歴史

 CEOのホック・タン氏は買収王と評されており、下図のように買収を繰り返している。ブロードコムを理解するには、買収の推移を理解する必要がありそうだ。

 2016年に(旧)ブロードコムを買収した後の大型買収は、半導体事業(図の上段)からソフトウェア事業(図の下段)へ移っていることが分かる。

 日本でM&Aというとハゲタカのイメージがあるが、ブロードコムに関しては、M&Aが上手く機能しているように見える。まず、2016年に(旧)ブロードコムを買収した際に、社名をブロードコムに変更したことが挙げられる。社内の意識統一や融合を進めるには、相手を尊重することが必要であるが、社名を変えるとは思い切ったことをする(アメリカの合併に近いM&Aでは、名前をくっ付けていくことが多い)。

 また、VMwareの買収が完了したら、ソフトウェア事業の総称を、ブロードコムソフトウェア(変更したばかり)から、VMwareに変更することを予定している。表に出ていないことも含め、様々な配慮がされているのだろう。 ・2018年にクアルコムの買収が失敗し、これ以上半導体事業での買収が難しくなり、ソフトウェア事業での買収に舵を切り、2018年のCAテクノロジーズ以降の買収につながる。

出典:会社資料より筆者作成

半導体事業の成長率と持続可能性

 全社の売上は右肩上がりで成長しているものの、2018年に18%あった売上成長率は、2019年、2020年は8%、6%と伸び悩んでいる。2021年には14.9%と成長率が回復している。四半期ベースでも成長が鈍化していないことを確かめてみると、2022/1Qは15.7%、2022/2Qは22.5%、2022/3Qは24.9%と成長率を20%台に乗せてきている。なお、2021年10月期の年度決算は11か月分となっており、変則決算なので注意が必要である。

 半導体事業とソフトウェア事業を事業毎に分解して、売上成長率と営業利益率を見てみると面白いことが分かる。 半導体事業は、売上成長率が2021年は18%、2022/1Qは19.7%、2022/2Qは29.2%、2022/3Qは31.9%と四半期毎に成長率が上がっている。これに対して、ソフトウェア事業の売上成長率は2021年は6.7%、2022/1Qは4.9%、2022/2Q及び3Qは4.7%と徐々に落ち込んでいる。

 ソフトウェア事業は主に法人向けサービスを行っていて、大きくジャンプアップする要素がない中で、5%程度売上を増加しているのは大したものだと個人的には考えるが、ブロードコム全社で考えると、ソフトウェア事業が業績の足を引っ張っているように見える。

 念のため過去の、半導体事業の売上成長率を辿ってみると、2019年は▲8%、2020年は▲1%、2021年は18%となっていた。半導体事業は、2021年からの成長率は素晴らしいが、一過性のものではないか留意する必要はある。なお、同時期のソフトウェア事業の成長率は、買収した企業の影響が大きいものの2019年は190%、2020年は28%、2021年は7%となっていた。このデータから分かることは、半導体事業とソフトウェア事業のは、片方の成長性が低い場合でも、もう一方の事業が補っており、バランスがとても良い状態である。

 半導体セクターは、4年ごとに好不況のサイクルが繰り返されると言われている。この点、IoT、5G、クラウド化など新技術が市場に投入されているため、現在は従来のサイクルを超えたスーパーサイクルに突入していると言われている。どの時点で、不況モードに入るのか世界景気と睨めっこになる。

 S&Pグローバル社の調査によると、2022年7月時点で、半導体不足は長期平均の6倍程度に達していて、さらに中国のロックダウンが、この事態に拍車をかけている。また、半導体価格は過去の平均価格の15倍で推移しているということから、若干バブル状態になっていると思われる。そのため、半導体の需要が収まった際の半導体価格の下落に注意する必要がある。

出典:会社資料より筆者作成

VMwareの買収と、ソフトウェア事業の今後

 2019年にシマンテックを買収した以降、大きな買収はなかったが、ここに来て買収王ホック・タン氏が目を付けたのが、VMwareである。この買収額は巨額で、6兆1,000億円での買収を予定している。

 VMwareはサーバー仮想化技術、ネットワーク仮想化技術に強みがある企業であり、2021年11月にDellからスピンオフしている。2022/1QでのDellへの売上に占める割合は37%と、Dellへの依存度が高いと言える。

 VMwareは仮想化技術以外にも、ソフトウェアの製品ポートフォリオが良く、世界中に顧客を持っている点が評価されている。新ブランドのVMwareとして、ブロードコムのソフトウェアとVMwareのソフトウェアをパッケージし、世界中の顧客へアクセスすることで、売上倍増を目指している。

 気になる点は、VMwareがブロードコムの売上にどの程度寄与するかという点である。仮想化技術には競合もあり、Dellから独立したことで現状は厳しい。売上成長性は2022/1Qが3.1%、2022/2Qは6.3%、営業利益率は1Qが13.2%、2Qが16.9%となっており、成長性や利益率が良いとは言えないが2Qにかけて改善してきている。半導体セクターが落ち込んでいるため、3Q以降の売上成長率と営業利益率に期待したい。

 VMwareの2022/2Q(2022/7月期)売上は、3,336億円となっており、これがブロードコムのソフトウェア事業に加わると、半導体事業とソフトウェア事業の割合が半々となり、事業ポートフォリオとしては、非常にバランスの良い会社となる。2023年中の買収完了を予定している。

出典:会社資料より筆者作成

ブロードコムの強さの源泉

 ブロードコムがなぜ、こんなにも多くの大型買収が行えるのか。それは、潤沢な営業キャッシュ・フローがあるからだ。営業キャッシュ・フローでいうと、2020年が1兆2,061億円、2021年が1兆3,764億円、2022年1Q+2Qが7,729億円と年々増加している。

 この潤沢なキャッシュ・フローを株主還元にも利用しており、配当は2018年の7ドルから、2021年の14.4ドル、2022/2Qの4.1ドル(寄稿時点で、利回り3.5%)と倍増させるとともに、自己株式の取得も1.3兆円の枠を設定し、2022/2Qだけで12,153億円の自己株式を取得している

 EPS(一株当たり利益)が上下しているが、配当利回り2.9%で、今後の成長が見込まれるのであれば、投資妙味はある。PERが若干高めであるが、2018年の19倍付近まで下がるのを待てるのかがポイントだろう。

おわりに

・最後まで、お読みいただきありがとうございます!

・この点をもう少し詳しく解説して欲しい、解説して欲しい他の会社などありましたら、
 お気軽コメントください。お待ちしています。

・シリーズ化してお届けしていますので、いいね、コメントなどで反応してもらえたら、
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・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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