はじめに
いつも、来月、来年、3年先、10年先の展望を考えて投資しています。ほとんどの年の相場は読みやすいのですが、2023年は2022年と同様に結構難しい相場になると考えています。頭の中で考えるより、アウトプットすることで、考えがマトマルこともあるので、みんなに考えを共有するイメージで2023年の相場を記載して行こうと思っています。
材料も一つではなく、金融政策、企業業績、地政学など様々なので、それぞれを考えた上で、ストーリーと確率を考えて行こうと思います。一つのストーリーに固執すると大きくやられてしまう可能性あるため、複数の材料から複数のストーリーを考え、そこに確率を掛け合わせて、私のおススメのメインストーリーを展開しようと思います。
各材料はどのように動くのか
インフレの行方
まず、2022年の大きなテーマであったインフレは引き続き2023年のテーマになると考えています。インフレの原因となるものがいくつかあります。代表的なものでは①エネルギーとコモディティ、②家賃、③人件費があります。
①エネルギーとコモディティについては、地政学リスクの影響は薄まり、一時の狂乱は収まりましたが、現状の水準以上で推移することを想定します。②家賃については、住宅関連指標がやっと落ち着き、さらに住宅ローン金利も上昇しているため、若干和らぐと思いますが、家賃の改訂の頻度は少ないため、価格に反映されるのは2023年の後半以降かと考えています。住宅関連はいわゆる遅行指標と言われていることを理由とします。③人件費についても高止まりを想定します。一部のIT大手は人を削減していますが、もっと大規模に人の削減が起こらないと人件費は落ち着かないと見ています。
よって、インフレは徐々に落ちついてくるものの、FRBが想定する2%の水準まで落ちるかというと、少し遠い水準になると想定します。
FRBのターミナルレート
2022年は金利上昇の影響を受けて、相場は逆金融相場となりました。現状では5.1%程度を目標とし、あと0.75%を上昇させると想定されています。2023年に利下げされると金融相場が開始されるので、株を大きく買っていけるチャンス到来となりますが、現状では2023年中に利下げ開始とならないと想定しています。
この理由は、上記の通りインフレが高止まりしている可能性が高いからです。2023年初めに+0.5%(0.25%の2回or0.5%の1回)まで持っていってから、最後の0.25%はワイルドカードとして残すことを想定します。この0.25%を残すことで、まだ利下げではなく、利上げ局面ですよとアナウンスすることで、相場の上昇圧力を抑えようとすると考えています。これは、インフレの1つの要因として株高(資産効果)もあるため、株を安い水準に置いておくことで、逆資産効果を狙うものと考えています。
なお、リーマンショック前には5%超の金利水準は普通でしたが、2009年以降でこの水準感は久々なので、どこかにハレーションが起きることも想定しています。また、金利の上昇スピードも異常です。直近では1回で0.75%の上昇だったため、これに慣れていると、0.5%の上昇は大したことがないと感じるかもしれませんが、かなり異常なスピードで上昇させています。1970年代にもインフレと闘った時期がありましたが、当時のボルカーさんと同じくらいの強権を発動させています。
2023年に利下げを開始しないと想定しているのは、かなり大きく(悪く)インフレ指標が動かないと、利下げを開始しないと考えています。これは、1970年代にインフレが収まったと誤解して政策を転換させてインフレが再開してしまった経験があるため、前回の轍を踏まないようにしようとしています。
よって、インフレが落ち着かないこと、金利が高止まりすることで、大きな企業業績の落ち込みが一時的に到来する可能性を想定しています。
企業業績のゆくえ
株価が低迷しているのに関わらず、企業業績は強いですよね。株価はEPS(一株当たり利益)×PERで決まります。FRBの金利が上昇するとPERが下がってくるので、EPSが一定でも、株価が下がることになり、これが逆金融相場と繋がっています。逆金融相場の後には、逆業績相場が始まると言われています。これは、金利を上げ過ぎて、借入金などの支払利息負担が大きくなるなど、企業業績が悪化するが想定されるからです。
さて、企業業績が良いのは、コロナショックから立ち直るため、ばら撒きが大規模に行われて、若干QT(金融引き締め)が行われいますが、ばら撒き効果の方が依然として大きいため、金利は上がっていますが、まだ資金がジャブジャブの状態が続いているからです。そこで、企業業績の悪化の兆しはあるのかというと、兆しは見えています。
皆さんが、経営者であった場合に、コストを削減しようとするところはどこになりますかね?現状で、大きく削減しやすい2つとしては、①広告費、②IT投資になります。この2つが真っ先に削減されるため、①広告費を主な収入源としていたIT大手が苦戦しています。また、②IT投資も後回しでもよいと考える企業も増えてきているため、企業向けのIT企業(エンタープライズソフトウェアなど)が苦戦しています。このコスト削減で吸収できない場合に、利益が下がってくることとなります。現状では、来期以降の企業業績の見通しを引き下げている企業は多くはありませんが、今後増えてくると想定しています。
各投資会社が来年のEPSを予想していますが、概ね+10%~▲20%と幅がある状態です。個人的には、プラスになるよりは、マイナスとなる可能性が高いと考えています。
なぜ、証券会社などが個別の企業のレーティングを下げないのかというと、来年の景気の見通しが非常に難しいこともありますが、株などを買ってもらわないといけない(取引の手数料が大事)ので、ギリギリまで引き付けておく必要があるものと考えています。
また、米国企業の業績の悪化は、米国の景気後退により引き起こされるのではなく、米国よりさらにインフレが強い欧州が発端になると考えています。FRBにおいては、ある程度金利上限を示した形となりましたが、ECBは0,5%の利上げを相当程度継続することが強調されていたため、インフレと利上げに耐え切れなくなった欧州が先に景気後退入りし、その影響が米国へくるものと考えています。
このため、米国の景気後退は欧州ほどは深くならないものとなると考えます。
ドル円の行方
米国株へ投資する際に、ドル円の動きも重要と考えるため、株式投資とはあまり関係ないように思えますが、敢えて触れておきます。米国株の株価は、日本人にとっては、EPS×PER×ドル円レートとなるため、ドル円の行方も重要となります。
株と比較するとドル円の相場(FX)はめちゃくちゃ難しいです。ただ、政策などから大きな流れは分かる(短期の流れは想定するのが難しい)ので、大きく外さなければ、利益が得られると思います。FXは人生を狂わせる可能性があるので、推奨しませんが私のTwitterをご覧頂いている方は、エントリータイミングなど理解頂いているかもしれません(ポジションが偏ってかなりの確率で勝てそうなタイミングで年に2-3回程度しかエントリーしません)。
さて、本題ですが、2023年は現状の137円の水準から考えると、円高方向へ動くことを想定しています。理由は2点です。①アメリカの利上げの想定水準が高止まりしている。②日銀の政策転換を期待している。③景気後退の影響。①については、インフレが悪化し過ぎて、再度利上げ開始になったら戦略転換が必要かと思いますが、現状ではこれ以上の利上げが想定されていないため、ドルの水準は切り下がり、円高方向へ引きずられることとなります。②については、日銀が利上げをする期待がありますが、期待だけに終わり、しばらく同程度が継続するのではないかと思います。ただ、期待だけで円高方向になるかと考えています。確率は低いですが、2023年に日銀も利上げするのであれば、大きく円高方向へ動くと思います。③欧州の景気後退はかなり確率が高く、景気後退になった場合、円高方向へ動きます。
このため、ドル円だけで考えると、2023年の米国株は徐々に下がることを想定しています。
(追記)と、ここまで記載したところで、12/20にYCCの金利幅変更で、日銀砲炸裂。うーん、後追い記事みたくなってしまったな。。
大統領選挙の前年の強烈なアノマリー
2024年は米国の大統領選挙があります。大統領選挙の前年には、大統領選挙に向けてアピールしないといけないため、大きな政策が出やすい年となります。このため、株式市場にとってはポジティブな環境となります。これがアノマリーとなって効いてくることとなります。
1950年以降の大統領選挙の前年の株価の動きとしては、17勝1敗となっていて、なんと勝率は94.4%となっています。このアノマリーを信じるのであれば、年始に投資して黙っていれば必ず勝てることとなります。もう少し細かくデータを見てみると、NYダウでは17勝の平均リターンは16.2%で、1敗の時も▲2.2となっているため、負けたとしても大きく負けないのが特徴となっています。
ただし、注意しなければならないのが、このアノマリーの始点と終点が、年始と年末になります。そのため、年の途中で大きく下がった時でも、年末に上がっていればアノマリー継続となります。
株価の動き
シナリオ①
アノマリーの通りに上昇する。ただし上昇幅は大きくなく、最大10%程度となる。このシナリオの確率は10%程度と想定します。
シナリオ②
大きな景気後退は起きずに、ボックス相場を展開する。このシナリオの確率は30%程度と想定します。
シナリオ③
景気後退が起きる。このシナリオの確率は60%と想定します。この場合、15%~20%程度の下落を想定します。なお、ナズダックが直近高値(2021年11月)から60%程度下落すると、9,600付近のため、その程度までは下落することが考えられます。さらに突っ込む場合は、8,000付近もありますが、ここはコロナでの出戻り付近なので、それ以上は進まないと想定します。
取るべき最良の手(全体感)
まず、シナリオ①の場合、ドル円の相場を考慮すると、上手くいってトントンと考えます。次にシナリオ②の場合もドル円の相場を考慮すると、損失が出ることとなります。最後にシナリオ③の場合もドル円の相場を考慮すると大きな損失が出ることとなります。このため2023年は投資しないことが最良の手となります。ただ、下記の通り組み合わせることで勝機が見いだせると考えます。
日本株
上記は、米国企業を前提としています。日本企業の場合は2022年は円安効果で利益が過去最高の企業が多かったが、円高(+場合によっては世界の景気後退)へ振れた場合は業績が2022年より悪化することを考えると、2022年の水準よりは悪くなることが容易に分かるかと思います。このため、私は増税の報道が出た2022/12/14日にツイートした通り、長期で保有していたものも含め、ほとんどの日本株を売りました。残っているのは、20年前に購入した投資初年度の記念の株だけです。
米国株
米国株は12月のCPIの発表の際に上昇したため処分してしまったので、長期+積立以外は保有していません。全体感としては、2023年は投資すべきではないと考えていますが、シナリオ③で大きく落ち込むときがあれば、そこでエントリーしたいと考えています。シナリオ①、②の場合は放置して、再度利上げが開始されるまで待ちます。
個人的な一番のメインストーリーは、年の途中で▲15%となり、そこから徐々に上げて年末に+5%となっていることかなと思います。これでも20%以上は利幅が取れるので、大きく勝てるタイミングを待てば良いのかと思います。このため、大きく落ちるまで私は待機することとしています。個人投資家が機関投資家を出し抜けるのは、投資しなくても良い時がある時と、長期で投資できる時なので、2023年は機関投資家の成績を上回れる良い機会かと思いますので、楽しんでください。
よく分散投資が叫ばれます。時間、銘柄(個別株だけではなく、債券やコモディティ)、国などを分散しろと。安全にいくのであれば、分散投資が必要です。ただし、敢えて大きく勝つためには、エントリータイミングとイグジットタイミングを見定めることが必要です。2023年で大きく下がった時はここ10年でまたとない絶好の買い場となると思うので、一緒に買い進めましょう!
安全に行くのであれば、底を当てる必要はないので、大きく落ちて少し反発したタイミングからエントリーでも良いと思います。確実に勝ちたいのであれば、利上げが再開されてからの投資再開で良いかのと思います。
おわりに
- 最後まで、お読みいただきありがとうございます!
- 投資は自己責任でお願いいたします。
コメント