はじめに
・決算書サマリーでは見えなかった、 エクソンモービル(XOM)の隠された真実を解き明かしていきます。 【ここに注目】 ①単なる高配当株ではなく、成長株の側面もあり ②成長の源泉は、価格上昇×生産量増加にあり ・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。
どんな会社
【企業概要】 39年間増配を行っており、S&P500配当貴族指数銘柄の代表格である。米国を始め世界の多くの国で事業展開するグローバルなエネルギー会社で、原油・天然ガスの探鉱及び生産、石油製品・石油化学製品の製造等を行っている。他の石油メジャーと同様だが、開発から販売まで行う垂直統合型のビジネスを展開している。
【事業ポートフォリオ】①上流(upstream)、②エネルギー製品、③化学製品、④特殊製品に分類されているが、基本的には原油及び天然ガスにかかる事業に関するものである。以前は①上流、②下流、③化学と事業が分類されていたが、2022/2Qから上記の分類へ変更されているため、何か大きな動きがある可能性もある。
エクソンモービルの原油と天然ガスの産出量(ベレルベース)は1:2程度であり、その産出エリアは下の図となっている。エネルギー不足で、景気後退懸念が高まっているヨーロッパは、エクソンモービル関連においては、原油は産出が0%、天然ガスも10%となっており、そもそも埋蔵量が少ないことが分かる。
石油株の特徴-原油価格と株価の連動
【株価】10年前をゼロとして、エクソンモービルの株価、原油価格、天然ガス価格の推移を比較すると、上の図となる。他の石油株も同様であるが、ほとんど、原油と天然ガスの価格と同じような動きとなる。これも他社と同様であるが、2022年夏に関しては、天然ガスの価格上昇に株価が追い付いていないことである。また、エクソンモービルの場合、ここ10年で俯瞰すると100ドルあたりがアッパー(下の図)となっているのが分かる。四半期の業績は多少タイミングが遅れて発表されるが、この価格差は埋めるような動きとなるのが通常である。また、バフェット銘柄のシェブロンやオクシデンタルペトロリアムが原油高に大きく反応しているが、エクソンモービルは控え目な反応なので、投資妙味はあると思われる。
【業績】業績についての留意点は、2020年/12月期の年間売上が17兆8,574億円と20兆円を下回り、営業利益も3兆,653億円のマイナスとなっている。これは、2020年に原油価格が低迷し、40ドル付近で推移したことが原因である。
2020年以外の直近5年間の原油価格は、60ドル付近で推移しており、売上は20兆円を超え、営業利益も確保できている状態であった。
また、2021年は原油価格が60ドルを上回って推移したため、売上が27兆6,692億円、営業利益が2兆3,233億円となっている。現状では、原油価格が80ドル以上で推移しているため、かなり良い年間決算が期待できる。
なお、2021年/12月期の年間の当期純利益は2兆3,040億円であったが、2022年は2Qの6か月間で当期純利益23,330億円(2倍のペース)となっているため、株価が再評価されて、次のレンジに入る可能性は高い。
高配当株のジレンマからの脱却
高配当というのは、成長のための投資を抑えているため、配当に回している企業が多い。エクソンモービルにおいては、39年間増配を行い、株主還元に積極的であるが、売上の成長が横ばいなため、株価についても10年間ほぼ横ばい(成長していない)となっている。ただし、ずっと横ばいだった売上に異変が起きている。エネルギー価格の上昇と、生産量の増加である。
【価格】外部要因であるものの、原油価格と天然ガス価格が急上昇したおかげで、業績が急回復に留まらず急成長となった。2022/2Qで見ると前年同期比70%増となっている。石油メジャーは原油価格が60ドル~70ドル付近でそこそこの業績が出せると言われている中で、原油価格が100ドル付近となると、莫大な利益を産むことになる。ノルドストリーム1の供給停止が継続されると、欧州のエネルギー価格の上昇は避けられない(特に冬)。
【生産量】今後、エクソンモービルの躍進を支えるのは、ガイアナ(詳細後述)だと言われている。ガイアナの海域で次々と石油鉱床が発見され、エクソンモービルで過去10年で最大の発見だと言われている。
【結論】販売価格が上昇して、生産量も大幅に増加するのであれば、業績は右肩上がりに増加していくことが想定される。単なる高配当株に留まらず、しばらく高成長株としての面も持ち合わせることになる。
ガイアナでお宝発見
「ガイアナ」は、聞きなれないワードであるが、中南米のベネズエラの東隣の国である。エクソンモービルは、オフショアで数多くの調査・開発事業を現在も継続しており、2015年から現在まで25件の石油鉱床を発見している。上の地図の赤い〇を付けた場所で主に採掘している。
生産は2019年から行われており、年々生産量が増加している。エクソンモービルの原油換算の生産量は全体で日量373万バレルとなっていて、2021年と比較すると4%の増加となっている。
ガイアナでの生産は始まったばかりで、先行するリザでは日量34万バレルとなっており、2025年には第3プロジェクトのパラヤ、第4プロジェクトのブリは稼働するとそれぞれ日量20万バレル以上を生産すると言われている。このため、2025年にはガイアナだけで日量150万バレル以上となることが想定されている。これはエクソンモービルの生産量の1/3を担うほどの量であることが分かる。
ガイアナの使用可能な資源量は110億バレル以上(20年分)と想定されている。なお、この推定量には、2022年7月にニュースになったほどの大きな鉱床の発見にかかる資源量は含まれていないため、今後発見されてくる鉱床を含めるとエクソンモービルの生産量の相当量をガイアナで賄うことができる。
株主還元の加速
39年間増配を継続しており、株主還元には積極的なエクソンモービルであるが、今後の展開について検討してみようと思う。
まず、2022/2Qの6か月間の営業キャッシュ・フローは3兆4,751億円となっている。一方で、投資や財務(借入返済/配当)のキャッシュ・アウトはそれぞれ7,009億円、1兆5,384億円となっており、営業キャッシュ・フローで稼いだキャッシュがあまり使われず、1兆2,059億円を持ち越している状態である。増配は問題ないだろう。
さて、ここで経営陣なら、キャッシュをどのように還元するのだろうか。39年間増配をしていることを考えると、今後も増配を継続したいと考えると、2022年に大幅に配当を増やすと翌年以降の増配計画に狂いが生じてしまう。そこで、他の株主還元となると、自社株買いとなるのだろう。2022/2Qの6か月間では5,986億円の自社株買いが行われているが、1兆2,059億円のキャッシュが余っている(現預金も6,802億円から1兆8,861億円へ増加)ことに加えて、3Q及び4Qでも同程度のキャッシュが余ってくる。
さらに、2022年1月から自社株買いに1%の税金が課されるとなる。このような状況下では、年内に追加の自社株買いを行っておこうとするのが通常の判断ではないだろうか(キャッシュ残が多いと経営判断が悪いと株主から突き上げがある)。
タラればで恐縮だが、さらに自社株買いが行われると、株価にブーストがかかるので、一口買っておいても面白いと思われる。仮に自社株買いがなくても、配当利回りが3.7%であれば長期保有していても問題ないだろう。
おわりに
・最後まで、お読みいただきありがとうございます! 同じ石油株のシェブロンとオキシデンタルペトロアムも分析しております。 ・この点をもう少し詳しく解説して欲しい、解説して欲しい他の会社などありましたら、 お気軽コメントください。お待ちしています。 ・シリーズ化してお届けしていますので、シェア、コメントなどで反応してもらえたら、 更新の励みになります。 ・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。
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