驚異の参入障壁:鉄道セクター時価総額TOP5について徹底検証

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米国企業の解説
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カンザスシティ・サザン買収効果でCPはどうなる?

 2021年9月に米国の鉄道大手カンザスシティ・サザン(以下「KCSと言います」)、③CP(カナディアン・パシフィック)による約3兆1千億円の買収提案を受け入れた。KCSは米国以外にメキシコとパナマでも展開しており、この合併によって初めて、米国、メキシコ、カナダの北米3カ国をつなぐ鉄道網が誕生することになる。

 KCSの買収には当初、②CNIも参加しており③CPよりも高い買収額を提示し、一度は②CNIによる買収で合意していた。しかし、8月に米国の陸上運輸委員会(STB)の横やりにより頓挫していた。その後、③CPが再度の買収提案を行い、今回の決定に至っている。

出所:カンザスシティ・サザン公式HPより

 買収後の③CPは下記のように、約1.5倍の規模になると想定されている。

  • 路線:13,000マイル ⇒ 20,000マイル
  • 従業員数:12,711人 ⇒ 20,000人
  • 売上:8千億円 ⇒ 1兆1千億円

 買収の効果として、悪い点と良い点を一つずつ記載すると、まず悪い点であるが、KCSの営業利益率が若干低いことだ。KCSの営業利益率は2021年が29.9%であり、2022/2Qは少し回復し37%となっている。③CPの営業利益率を悪化させる可能性があるが、売上割合の35%程度の影響のため、そこまで神経質になる必要はないかもしれない。統合することで、効率性などが高まることを期待する。

 KCSは下の左の図のように鉄道網を有している。③CPとKCSは合併の最大の効果として、下の右図のようにメキシコ、米国中西部、カナダ間で急を要する高付加価値部品や腐食性食物などのインターモーダル輸送が可能になる、3カ国間の自動車関連の製造・物流拠点を接続することが可能となることを挙げている。米国中西部で途切れていた輸送網が繋がることで、より経済活動が盛んになることが想定される。特に、メキシコは経済摩擦やインフレの影響で米国資本が流れこんでいる最中なので、今後より米国との経済的距離が近くなることを考えると、③CPの発展は面白い展開を迎えると思われる。

出所:カンザスシティ・サザン公式HP及びCP公式HPより

 2022年8月の③CPの発表によると、米国外国投資委員会(「CFIUS」)による規制認可を受けている。③CPが提案するKCSの支配に関する陸上運輸委員会(STB)のレビューは、2023年初頭に完了する予定となっている。

なぜ、バフェットはBNSF鉄道を完全買収したのか

 バフェットは2010年にBNSFを4兆4千億円で買収した。BNSF鉄道は、23,000マイルの線路を有し、米国西部28の州に鉄道網を展開している。今後大きな設備投資が不要であり、利益率が高く、継続して営業キャッシュ・フローが見込めることはもちろんのこと、参入障壁が高いビジネスであることが、買収に至った大きな理由だろう。

出所:ルートマップツールより筆者作成

 上の図を再掲するが、西部に展開している灰色(地図のBNSF)がBNSFの路線である。①UNPと若干重複している部分はあるが、ほとんどの地域で競合がいない状態である。新たに線路を敷設しようにも、土地を用意することから始めるとコストに見合うのかが不明なため、なかなか線路を新設することが難しく、優位性は継続するものと思われる。

 この視点で、東部を見てみると、かなり込み合っていて、競合状態が作り出されており、寡占状態に至っていない。一方で、BNSFと①UNPの西部においては、それぞれ寡占状態を作り出すことに成功している。BNSFの株を購入することはできないが、①UNPは購入することができる。

セレクト

 各社経営指標を上記で検証したところ、業績は概ね同水準と言える。その上で、この5社の中から選ぶのであれば、私は①UNPと③CPを購入するだろう。

 まず、①UNPについては、RTMが高いこと、従業員を75%とするなど効率化が図れていることもあるが、一番大きな理由は西部で寡占状態を作れていることだ。

 次に③CPについては、カナダ、米国、メキシコの連携により、メキシコの経済発展を大きく享受することができると考えているため、面白い銘柄であると言える。

出所:楽天証券ツールにより筆者作成

 5年前を起点とした各社の株価の推移は上記の様になっている。各社概ね上昇傾向で、ある程度同じ動きをしているが、③CPのパフォーマンスが一番良い。PERは④CSXと⑤NSCが16倍、①UNPが18倍、②CNIが21倍、③CPが22倍となっている。各社15倍~25倍のレンジに収まっている時間帯が長いため、今の水準は高くもなく、安くもない水準である。

 2023年に景気後退懸念から、来年度以降の見通しを引き下げてきている。景気後退になれば、貨物量が大幅に減るため、各社の売上及び株価は下落することが想定されるが、景気循環は2年の後退、8年の成長が一般的なため、鉄道セクターにエントリーするには良いタイミングが来るだろう。

 各社車両のEV化を検討している。ESG関連で温室効果ガス排出量の削減目標も設定していることから、徐々に進んでいくものと考えている。そのEV化の過程で、この数十年ほとんど変化がなかった鉄道セクターに大きな変革が起こらないか期待しているところもある。

おわりに

  • 最後まで、お読みいただきありがとうございます!
  • この点を申し少し細かく検討して欲しいや、 他の企業を分析して欲しいなどありましたらお気軽にお問い合わせください。
  • 米国株の分析をしているので、お好みの個別銘柄と出会えたら幸いです。
  • 個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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