衛星会社との連携で変わること
各社の衛星会社との連携
ウクライナに衛星通信サービスを無償提供されたことで話題となったイーロン・マスク氏が率いる米国航空宇宙企業スペースXは、T-Mobileと連携することとなった。衛星通信サービス「スターリンク」を駆使して、これまでT-Mobileの電波圏外だった遠隔地に無線通信サービスを提供する計画を発表した(2022年8月)。山間部や砂漠といった地形上の制約から、現在のLTEと5Gでは、米国の20%以上がスマートフォンから無線通信に接続できない状況にある。これらの地域において良好な通信サービスを提供するとした。今回の計画は、スペースXが予定している衛星打ち上げ後、2023年末までに一部の地域でベータ版からサービス提供の開始を予定している。
これに先立ち、大手通信業者と衛星プロバイダーが、衛星通信サービスを導入するために提携している。AT&Tは2021年9月には衛星通信会社のワンウェブと提携し、人工衛星による企業向けインターネット接続サービスを提供すると発表している。2021年10月には、ベライゾンは自社の無線ネットワークを強化するために、Amazonのブロードバンド「プロジェクト・クイパー」との提携を発表し、LTEと5Gのカバレッジを増強する計画を明らかにしている。
人口衛星を使った通信サービスの何が凄いのか?
携帯電話の場合、電波が繋がっているのは地上の基地局で、そこからインターネットに接続されている。衛星インターネットの場合、地上に基地局が必要なことは変わらないが、その間の中継に衛星を使う。なお、衛星との通信のためには、専用のアンテナが必要になる。
これまで主流だったのは、静止衛星を使った通信サービスであった。静止衛星であれば、1基だけで地球の広い範囲をカバーできる。これに対して、スターリンクなどが飛行しているのは、高度550kmの地球低軌道である。衛星1基でカバーできるのは数100kmくらいしかなく、上空に静止もできないため、広い範囲をカバーするには大量(数千基以上)の衛星を飛ばす必要がある。しかし、高度36,000kmの静止衛星に比べ、はるかに地上から近いため、通信速度を早くすることができる。この結果、ダウンロード速度は、100~200Mbps程度が可能になると言われている。
衛星数は、スターリンク(2,700基⇒T-Mobile)、ワンウェブ(衛星650基⇒AT&T)、Amazon(3,200基⇒ベライゾン)となっている。
今後の展開(妄想)
自宅のインターネットから始まり、それが携帯電話で利用できるようになった。自宅のインターネットはオンラインゲーム(eスポーツ)などができるように高速化が進んでいる。外出先でも同じように高速化している通信速度を利用したいと思うだろう。衛星通信が携帯電話で利用できるようになった場合、利便性が上がるが、もちろん料金も上がるだろう。
メタバースが成功するか否かは分からないが、違う空間で双方向の通信をするというのは、今後さらに加速するだろう。違う空間に存在する人が、さも同じ空間に存在し、母国語が異なっても勝手に自動翻訳されてコミュニケーション取れる世界が必ずくるだろう。その際に必須なのは、高速化された通信サービスとその会社であるだろう。敢えていうのであれば、通信セキュリティー会社も今後さらに発展するのだろう。
3社のうち1社を選ぶなら
筆者が購入するのであれば、ベライゾンを購入する。まず、3社においては概ね大きな差や優位性はないと考えている。その上で、営業利益率が高く、配当利回りが7%と高い上にさらに増配傾向であることが理由である。確かに、T-MobileとAT&Tに若干顧客が奪われているが、トップを走っているため、打ち手が複数あると考えらる(買収や値下げ)。
T-Mobileについては、成長しているということから、買われているが、他2社と比較するとPERが60倍と高く、同じ市場で同じ業種に属しているにもかかわらず、評価され過ぎているように思われる(上の図の緑の線であるが、明らかに歩みが違う)。
AT&Tは、各指標をとっても、ベライゾンに劣後しているように見えるため、若干見劣りする。メディア事業の切り離し効果が決算書の数値に充分加味されていないのであれば、再考する可能性もある。ただ、配当を考えると、株主還元に積極的なベライゾンに軍配が上がるだろう。
通信会社は、ともすると成熟企業と見られがちであるが、上述したように衛星会社との連携で大きく成長する可能性があるため、5年超の長期で考えてエントリーすると面白い結果となるだろう。筆者は2022末~2023年にかけて少しずつ買い集めるとする。
おわりに
- 最後まで、お読みいただきありがとうございます!
- この点を申し少し細かく検討して欲しいや、 他の企業を分析して欲しいなどありましたらお気軽にお問い合わせください。
- 米国株の分析をしているので、お好みの個別銘柄と出会えたら幸いです。
- 個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。
コメント