各社の指標比較
加入者数
上の図が3社の携帯電話の契約者数(後払い+プリペイド)の推移となっている。T-Mobile(灰色)が2020/2Qに契約者数大きく伸ばしているのは、Sprint社の買収によるものである。また、ベライゾン(青色)が2021/4Qに契約者数大きく伸ばしているのは、TracFone社の買収によるものである。
かつては、ベライゾンが第1位、AT&Tが第2位、T-Mobileが第3位となっていたが、T-MobileがSprintの買収により大幅に契約者数を増加させたことにより、順位が入れ替わりT-Mobileが第2位、AT&Tが第3位となっている。なお、第1位はベライゾンのままである。2020年には、3社がかなり接近していたが、ベライゾンもTracFoneを買収し契約者数を増加させたことで差が再度開いた形となっている。
上の図は、契約者数の純増/純減を示した推移表になっている。これを見ると、T-Mobileは一貫して契約者数を増加させていること、AT&Tも2020年以降契約者数を増加させていること、一方でベライゾンは他社に契約者を奪われていることが分かる。数年後には、各社が横並びになっている可能性は大きい。これは、T-Mobileは数年前まで、米国の通信領域のカバー率(上述の地図)がかなり低かったが、スプリントの買収前後から改善し、ベライゾン及びAT&Tのカバー領域と遜色ないものとなっていることとも関係しているだろう。
売上推移
ベライゾン(青色)は、メディア事業の売上減少と携帯電話の後払い契約者数での市場シェア喪失により、2022年は若干売上が減少している。AT&T(オレンジ)についても、ワーナーブラザーズなどのメディア事業を分離しているため、売上が減少している。一方で、T-Mobile(灰色)は契約者数の増加に伴い年円売上を増加させている。
契約者数と比較して、ベライゾンとAT&Tの売上が大きいのは、ブロードバンド事業も展開しているからである。
営業利益率
カバー領域、サービス、契約者数については、そこまで大きな差がないと思われるが、営業利益率については各社かなり差がある。ベライゾンについては、2018年の18.1%をボトムに20%超を維持しており、かなり優秀である。AT&Tについては、メディア事業を分離させたことから営業利益率が改善傾向にある。AT&Tは2022年の数値が一番参考になると思われるが、1Qが14.8%、2Qが16.7%、3Qが20.0%と右肩上がりとなっており、営業利益率においてもベライゾンを猛追している。一方でT-Mobileについては、営業利益率が一桁台であり、直近の営業利益率はさらに悪化している。
解約率
解約率についても、各社特徴が表れており、なかなか興味深いデータとなっている。
概ね解約率が1%を下回っているというのは、各社囲い込みが成功しているということである。ベライゾンが直近の2022/3Qに解約率が急上昇しているのが気掛かりである。一方でT-Mobileは、2018年以降は解約率を1%以下に抑え込むことができている。また、AT&Tは解約率は安定しており、顧客満足度を一定に保っていることが分かる。
配当金
配当金に関しては、ベライゾンが抜群に良い。配当貴族指数に採用されるためには25年以上増配させる必要があるため、現状ではベライゾンは採用されていないが、2021年まで15年間増配を継続させている。なお、ベライゾンの配当利回りは7.02%(2022/11月時点)となっており、かなり良い水準であると思われる。
AT&Tは、業績に応じて配当金を増減させていることが分かる。AT&Tの配当利回りも6.10%と高水準となっている。一方、T-Mobileについては成長過程のため無配となっている。
PER
各社のPERは上記の通りである。ベライゾンとAT&Tは同水準となっている。パイがある程度決まっている市場で一定のシェアを取っており、成熟していると考えると妥当なPERであると言える。一方で、T-Mobileについては、Sprintを買収し成長が加速していると言っても、同じセクターでパイが限られている市場で競争している中で、1社だけが大きく評価されているのは、違和感がある。株価は期待感で買われるものなので、ベライゾンとAT&Tのシェアをさらに奪うことが期待されているのだろうが、果たして期待どおりのパフォーマンスが出せるのか。
次のページでは、衛星会社とのコラボで次なるステージへ移行する未来と筆者が購入するならどの銘柄?とその理由があります。
コメント