はじめに
- 米国の通信会社は、ベライゾン(VZ)、AT&T(T)、T-mobile(TMUS)の3社によって寡占状態にあります。また、今や携帯電話やインターネットは欠かせない存在で、これがなくなることはしばらく想像できないため、ビジネスがやりやすい環境にあると思われます。また、当時米国第3位だったT-mobileが第4位だったSprint(スプリント)を買収したことで、業界に変動が起こっています。このため3社の現在地と将来性について検討していきたいと思います。
- 【記事の流れ】①各社の紹介、②各社の指標比較、③通信衛星会社との提携、④3社のうち1社を選ぶなら
- 【ここに注目】
- T-mobileの躍進
- 配当を受け取るならどの銘柄?
- 通信衛星会社(スペースXのスターリンクなど)とのコラボで変わること
- ※決算書と比較しやすいように、1ドル=100円と記載しています。
各社の紹介
ベライゾン(VZ)
- 米国で最大級の通信サービス企業
- 時価総額:15兆7千億円
- 携帯電話契約者数(プリペイド+後払い):1億1,455万人(3社中トップ)
- 主要ブランド:「Verizon(ワイヤレス)」、「Fios(有線)」
- 2021年11月にTracFone(プリペイド式の携帯電話会社)を買収した
- 5Gサービスの展開により利益率が⾼い「プレミアム使い放題プラン」への移行が進んでいる
AT&T(T)
- ⽶国の⼤⼿通信サービス企業
- 時価総額:13兆円
- 携帯電話契約者数(プリペイド+後払い):8,818万人
- ワーナーブラザーズなどのメディア事業を切り離して、携帯電話とブロードバンドに集中している
- 5Gサービスについては、昨年取得したCバンドと3.45ギガヘルツの周波数帯域によって、ベライゾン、T-Mobileに対する競争⼒が向上すると⾒込まれる
- ブロードバンド分野で顧客開拓に注⼒している「ATT ファイバー」の契約数を2022年の700万件から3,000万件への拡⼤を目指している
T-Mobile
- ⽶国の⼤⼿通信サービス企業
- 時価総額:19兆円(3社中トップ)
- 2020年4月に当時米国第4位だったSprint(スプリント)を吸収合併した
- 携帯電話契約者数(プリペイド+後払い):9,324万人(スプリントを買収したことにより、第3位から第2位へ浮上している)
- 主要ブランド:「T-Mobile」、「Metro by T-Mobile」、「Sprint」
T-Mobileとスプリントの買収劇
T-Mobileとスプリントの買収劇については、ソフトバンクが買収に動いていたため、ご存じの方も多いだろう。2012年にソフトバンクが当時第3位だったスプリントを買収したが、その後第4位に転落している。ソフトバンクはスプリントとT-Mobilを合併させてベライゾンとAT&Tに対抗できる規模の通信会社にしようと考えたが、寡占状態を懸念して当時の米国の連邦通信委員会(FCC)が難色示し、合併を断念せざるを得なかった。
その後、反対にT-Mobilからスプリントの買収提案があり、ソフトバンクは主導権を失うことから難色を示したが、最終的には折れ、FCCも承認したことから、T-Mobileとスプリントは合併することとなった。ソフトバンクが主導権を握ることはできなかったが、ベライゾンとAT&Tに対抗する通信会社が誕生することとなった。
これにより、大手通信会社の寡占状態はさらに加速することとなる。ベライゾンがTracFoneを買収したことも、寡占状態に拍車をかけている。消費者としては、寡占状態にあることは望ましくないが、会社としてはビジネスがやりやすい環境になっていることは確かだろう。
次のページでは、各社の指標を比較分析しています。
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