規模拡大中のブリストル・マイヤーズ(BMY)を3分解説/公認会計士によるここだけの徹底分析/お宝株発見で寝るだけ投資

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米国企業の解説
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大型買収による成長加速

 2019年の年間売上が2兆6千億円だったものが、2020年に4兆2千億円となり、62%の売上成長率をみせた。既存の治療薬の伸びもあったが、この成長を支えたのは大型買収であり、買収先の治療薬が今後、どのようにブリストルの成長に寄与するか検討してみる。

セルジーンの買収について

 ブリストルは2019年11月にセルジーンの買収が完了させた。その買収額は、7兆4千億円とかなり巨額であった。がん、免疫系疾患、炎症性疾患および心血管疾患にわたる業界をリードする企業であり、当時6つの製品を含むフェーズⅢの大幅な増大により、1兆5千億円以上の売上を見込んでいたため、この買収金額となった。ただし、市場シェアの関係で、乾癬治療薬オテズラ(アプレミラスト)を手放す必要性が指摘され、オテズラの権利をアムジェンに1兆3千億円で売却することとなったことは、大きな損失であった。

 セルジーンの主力である、レブラミドは、2020年に売上1兆2,106億円をブリストルにもたらし、2022年においても、ブリストル全体で2番目に販売額が大きい治療薬である。その他、ポマリスト(Pomalyst/Imnovid)が3,070億円、アブラキサン(Abraxane)が1,247億円、Inrebicが55億円が計上され、4つの薬で2020年の売上として1兆6,478億円が計上され、買収による一定の効果はあった。2022年において、レブラミドは独占権の喪失により若干売上を落としているが、その他の3つの薬は順調に売上を伸ばしている。

 新薬候補では、6つが期待されていた。免疫系疾患と炎症性疾患の分野のTYK2とozanimod(2022年フェーズ3)の2つ、血液疾患の分野ではluspatercept(フェーズ2~3)、liso-cel(JCAR017)」(承認)、bb2121(フェーズ3)、fedratinib(フェーズ2、一部承認)の4つ。

 ブリストルは、乾癬治療薬のオテズラを手放すこととなったが、デュークラバシチニブ(Sotyktu)TYK2阻害剤として世界で初めて承認された(米国食品医薬品局FDAの承認)。このデュークラバシチニブ(Sotyktu)は、中等症から重症の尋常性乾癬の治療薬として約10年ぶりに開発された経口薬である。デュークラバシチニブは、さらにパイプラインで4つがフェーズ3、2つがフェーズ2を進捗している。なお、Sotyktuは「BMS-986165」であり、セルジーンから引き継いだTYK2ではなく、ブリストルの手持ちの開発薬であった。

ターニング・ポイント・セラピューティクスの買収

 オプジーボ(Opdivo)により、がん領域において、一定の地位を有していると言えるが、さらに加速させようとしているのが、ターニング・ポイント・セラピューティクス(以下「ターニングポイント」)の買収である。買収は2022年3Qに完了する予定で、 買収金額は4,100億円を予定している。

 ターニングポイントは、がんに特化した研究開発企業であり、発癌に関連する最も一般的な変異を標的とするように設計された治験薬のパイプラインを有している。特に注目されているのは、レポトレチニブ(repotrectinib)で、非小細胞肺がん(NSCLC)、進行固形腫瘍のROS1およびNTRK発癌性ドライバーを標的とする次世代のクラス最高のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)と言われている。レポトレチニブは、米国食品医薬品局から3つの画期的な治療法の指定を受けており、2023年後半に米国で承認され、ROS1陽性NSCLC患者の新しい標準治療薬となることを期待されている。

パイプライン

 開発パイプラインの充実しており、28薬が進行している。治療部位によってフェーズが異なるため、重複しているパイプラインもあるが、現在の進捗は下の図のようになっている。特定の分野に偏っていないため、バランスの良いパイプラインとなっている。なお、半数が、ブリストル独自で開発を行ってきたものであり、半数が買収によって開発を引き継いだものである。

出所:会社資料より筆者作成

 現状売上の4%、2000億円程度である新医薬品を成長させて2兆5千億円の売上を上げることを目標としているだけあり、パイプラインもフェーズ2,3が多い(2022年2Qでは新たな医薬品群の売上高が前年同期比2倍超となっている。)。

 研究開発は2019年のセルジーンの買収後に大幅に増加しているが、2022年は2Q(下の図は2022年のみ半期分、他は1年分)の半期分の計上であるが、前年度を下回りそうな金額となっている。買収を加速させているため、そちらに資金を注力させていることを想定する。 

出所:会社資料より筆者作成

株価

出所:会社資料より筆者作成

 新薬開発会社らしくと言っていいのか、結構激しい上下がある。買収後の2020年以降は規模も大きくなり、治療薬のラインナップと、パイプラインも充実したことで、若干ブレが落ち着いてくると想定している。

 PERは15倍から30倍を行ったり来たりしており、現状は20倍前半である。配当利回りも3%となっている。

 さて、ここから積極的にブリストル株を買っていくかという問題であるが、個人的には様子見して、デュークラバシチニブ(承認&フェーズ3)の販売状況とレポトレチニブ(フェーズ3)の効果が少し見えた段階で再度検討したいと思う。確かに新薬の期待はあるが、冒頭に記載した7割近い主力3つの治療薬が、そこまで力強く感じられないからである。

おわりに

  • 最後まで、お読みいただきありがとうございます!
  • この点を申し少し細かく検討して欲しいや、 他の企業を分析して欲しいなどありましたらお気軽にお問い合わせください。
  • 米国株の分析をしているので、お好みの個別銘柄と出会えたら幸いです。
  • 個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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