低PERのファイザー(PFE)を3分解説/公認会計士によるここだけの徹底分析/お宝株発見で寝るだけ投資

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ヘルスケアセクター
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はじめに

  • ベア局面でも強いヘルスケアの中で、近年covid-19のワクチンと治療薬で業績を急成長させているファイザーについて検討してみたいと思います。

【ここに注目】

  • COVID-19ワクチン及び治療薬の今後
  • 低PER(10倍)のなぜ

※決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。

出所:楽天証券ツールより筆者作成

どんな会社?

出所:会社資料より筆者作成

 ファイザー株式会社は、研究開発型の世界的なバイオ医薬品企業で、世界125ヵ国以上で展開している。セグメントは、決算書に記載されている順では、①ワクチン、②病院(感染症関連)、③腫瘍(がん)、④内科系疾患、⑤希少疾患、⑥炎症・免疫に分類されている。

 2022年にファイザーはどんな会社かと言われたら、米国の製薬企業を全く知らなくても、COVID-19のワクチンを製造する会社と答えるだろう。事実、2021年には30億回分のワクチンを供給し、2022年には最大供給40億回分の製造ラインを整えた。厚生労働省の発表によると、日本でも、モデルナ、アストラゼネカ、武田薬品などが供給しているが、2021年、2022年ともにファイザーの供給量が多い。

 COVID-19関連以外の治療薬の代表は、④内科系疾患のエリキュース(Eliquis、⾎栓塞栓症治療薬)、①ワクチンのプレベナー(Prevnar family、肺炎球菌ワクチン)、③腫瘍(がん)のイブランス(Ibrance、乳がん治療薬)、⑤希少疾患のビンダケル(Vyndaqel/Vyndamax、TTR型アミロイドーシス治療薬)、⑥炎症・免疫のゼルヤンツ(関節リウマチ治療薬、Xeljanz)が挙げられる(販売額順)。

 「Breakthroughs that change patients’ lives」とのパーパス(目的)に掲げられているように、新薬・ワクチン開発に注力する企業となっている。このため、2019年に一般医薬品事業を分離したことに続き、2020年11⽉には「バイアグラ」などを含む特許切れ医薬品のアップジョン事業部門を分離している(ジェネリック医薬品⼤⼿のマイランと統合)。

出所:会社資料より筆者作成

COVID-19関連の状況

 ここ数年のファイザーの成長を支えているのは、COVID-19のワクチンと治療薬と言っても過言ではないだろう。特に、2017年に売上のピークを付けてから2018年、2019年、2020年と売上が低迷していた。そこに2021年からCOVID-19のワクチンと治療薬が加わったので、ファイザーの業績は様変わりしたと言えるだろう。

 2022年の半期で見ると、売上の59%がCOVID-19のワクチンと治療薬となっている。治療薬は、経口治療薬の抗ウイルス薬「パキロビッド」であり、日本でも2022年2月に厚生労働省により特例承認されている。この薬は、錠剤で新型コロナウイルスに対して最も効果的なものであると言われおり、COVID-19患者の入院や死亡のリスクを89%減少させるとされている。バイデン大統領が2022年7月にCOVID-19で陽性確認された際に処方されたのも、ファイザーの「パキロビッド」だ。

 今後のCOVID-19の販売については、不透明なところがある。カイザー・ファミリー財団による調査によると、改良版のワクチンを接種した人と、早い接種を計画している人は1/3に留まった。そして12%は接種しないと回答したとある。また、バイデン大統領は「パンデミックは終わった」と発言した。

 一方で、米政府は2022年10月13日に公衆衛生上の緊急事態指定を90日間延長し、これを受けて医療機関への助成や低所得者向けの公的医療保険(メディケイド)の拡大などの措置も延長されている

 ここで一つ言えることは、COVID-19とはしばらく、お付き合いしなければならない可能性が高いということだ。これは、インフルエンザと同様にCOVID-19の抗原(ウイルス)が弱く、抗体が持続しないため、COVID-19に繰り返しかかってしまうことが想定されているためだ。

出所:会社資料より筆者作成

 すなわち、ファイザーのワクチンと治療薬はしばらく、売れ続けることを意味している。ファイザーのCOVID-19関連の売上を上の図で見てみると、ワクチンの販売額は2022年に入って1Qから2Qにかけて落ちているが、その一方治療薬の販売額が大幅に増加している。上述のアンケート調査の結果の通りにワクチンを接種しない方が増えたとしても、COVID-19に感染して治療薬を服用する方が同程度存在すれば、売上は維持できると想定する。

開発パイプラインの状況

 ファイザーの売上はCOVID-19関連が半分以上を占めており、若干不安になるが、パイプラインの状況は良好である。2022年3月時点で、パイプライン数総計96だったものが、最新では、phase1が34、phase2が34、phase3が28、Registrationが8の総計104となっており、研究開発は充実していると言える。開発費も毎期8,000億円以上と投じ、2022年は1兆円規模の研究開発費となっている。

出所:会社HPより、2022/2Q pipeline

 また、下の図をご覧頂ければと思うのだが、各セグメントでパイプラインが進捗しており、バランスが良い開発パイプラインとなっている。

出所:会社資料より筆者作成

 ファイザーは、自社研究でも新薬を開発しているが、COVID-19関連売上で得た潤沢なキャッシュを活かして、将来の収益多角化に向けたM&Aを積極的に進めている。ここでは、2022年1Q、2Qにそれぞれ発表された2社について紹介する。

バイオヘイブン・ファーマシューティカルズ社の買収

ファイザーは、2022年5月にバイオヘイブン・ファーマシューティカルズを買収すると発表した。その買収額は凄く、前日の終値に78.6%のプレミアムを乗せた株価で買収するとし、買収額は1兆1,600億円だ。これは、バイオヘイブン社が持つ新しいクラスの偏頭痛治療の将来性への期待が背景にある。

 バイオヘイブン社の注目薬の一つ目は、リメゲパント(Rimegepant、商品名ナーテック(NURTEC ODT米国/VYDURA欧州))である。リメゲパントは、片頭痛の急性治療エピソード性片頭痛の予防的治療の両方に効く治療薬である。このリメゲパントは片頭痛領域でのシェアで1位を獲得しており、片頭痛は世界で約10億人が罹患しているとされ、2030年の売上規模は6,000億円と想定されている。

 バイオヘブン社の注目薬の2つ目は、Zavegepantである、Zavegepantは片頭痛の急性治療のための鼻腔内スプレー、慢性片頭痛予防のための経口軟質ゲルとして開発されている。バイオヘイブン社の2022/2Qの決算書によると、phase3となっている。

 バイオヘイブン買収の完了は、2023年初頭を目標としており、④内科系疾患セグメントに加わる予定である。

アリーナ・ファーマシューティカルズ社の買収

 ファイザーは、2021年11月にアリーナ・ファーマシューティカルズを約6,700億円で買収すると発表し、2022年3月に買収を完了させた。アリーナ・ファーマシューティカルズのパイプラインには、消化器科、皮膚科、循環器科の開発段階にある治療薬候補が含まれている。

 期待されているのは、潰瘍性大腸炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎、円形脱毛症などさまざまな免疫炎症性疾患に対応するエトラシモド(etrasimod)である。特に潰瘍性大腸炎が注目されており、phase3の治験中となっている。エトラシモドについては、食道炎、円形脱毛症、クローン病への対応についても、phase2としてファイザーのパイプラインに記載され、研究開発が進捗している。

その他、微小血管閉塞のためテマノグレル(temanogrel)、全身性硬化症のレイノー現象(しびれなど)及び急性心不全のためのAPD418があり、これらもphase2としてファイザーのパイプラインに記載されている。

 アリーナ者が加わることで、⑥炎症・免疫及び④内科系疾患セグメントが充実することを目指している。

加速するM&A潤沢なキャッシュ

 ここで、COVID-19関連以外の主力薬の売上の増減を見てみると、2022年の販売額順では、エリキュースが前年同期比17.8%増、プレベナーが15.1%増、イブランスが5.9%減、ビンダケルが10.2%増、ゼルヤンツが26%減となっている。COVID-19関連以外の合計では、前年同期比2.5%減となっているため、売れ筋の主力製品の充実が急務となっている。

 COVID-19関連の売上により、2022/2Q末では、キャッシュの1,780億円以外に、短期債券で3兆1,500億円有しており、資金は潤沢になっている。さらに、2022年の半期で1兆4,711億円の営業キャッシュ・フローを獲得しており、この傾向は数年継続すると想定される。

 よって、この潤沢な資金を活かして、有望な新薬を有している会社を買収することが、今後ますます増えることを想定する。

業績と今後の見通し

 上述したが、2020年までは売上が停滞していた。成長率もマイナスからゼロ付近であったが、COVID-19まん延以降の売上成長率は、2021年が95.2%、2022/1Qが76.7%、2022/2Qが46.7%となっている。これは、COVID-19関連のワクチンと治療薬の売上の寄与によるものであり、COVID-19関連以外の治療薬については、横ばい状態である。

出所:会社資料より筆者作成

 営業利益率については、若干バラツキはあるものの、売上が停滞していた2019年、2020年もそれぞれ30%、19%と高い水準を維持している。それ以降はCOVID-19関連もあり、2021年が29%、2022年現在では33%を営業利益率を改善させている。

 COVID-19関連のワクチンと治療薬が、今後どれだけ売れるかの推定にもよるが、しらばらく高止まりが続くと想定している。また、買収した会社の新薬の開発の効果も少しずつ出てくる可能性もある。

株価、配当、PERについて

出所:楽天証券ツールより筆者作成、月足10年

 ファイザーは、市場からはあまり評価されていない。確かに、COVID-19が終焉した場合、ワクチンや治療薬が売れなくなり、COVID-19関連以外の治療薬は横ばいを続けており、販売されている治療薬のポートフォリオとしては心もとなく、現状の業績を元に判断すべきではないという意見もあると思われる。私はこの点、ある意味楽観視しており、数年は同水準以上の業績となり、潤沢なキャッシュで買収した企業の新薬で、業績をさらに膨らませると想定している

 そのように考えると、現在のPERは10倍程度となっており、かなり割安と思われる。また、上記の10年の株価推移を見ても、忘れられているかのような動きとなっている。さらに、配当も着実に増配しており、株価が据え置かれている現在では配当利回りが3.6%となっている。

 企業姿勢がネガティブな評価をされている可能性もある。製薬企業は多かれ少なかれ訴訟問題を抱えている。ただし、ファイザーに関しては、税務スキャンダルへ関与、Bextraの違法販売による2,300億円の支払いなどなど、過去には多くの問題を抱えていた。ただし、これも過去のことで、直近5年のPERの定点観測では、下記の通りとなっている。

    2017    2018    2019    2020    2021    2022
PER17.275.219.630.810.710.9

 業績など、直近の数値のみで判断すると、かなり割安の水準となっている。おそらく新薬開発に特化した会社となっていることから、継続した収益が上げられるというよりは、新薬開発に依存したギャンブル性が高い銘柄と判断されているということと結論付ける。そのため、ここまで低位で放置されているのであれば、少し試してみても面白いと思われる。

おわりに

  • 最後まで、お読みいただきありがとうございます!
  • この点を申し少し細かく検討して欲しいや、 他の企業を分析して欲しいなどありましたらお気軽にお問い合わせください。
  • 米国株の分析をしているので、お好みの個別銘柄と出会えたら幸いです。
  • 個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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