はじめに
シルバーゲートキャピタルとシリコンバレーバンクの経営破綻について、金融市場全体との関連で考えていこうと思います。
【ここに注目】
- シルバーゲートキャピタルとシリコンバレーバンクの資産とその状況
- 大きなショックの予兆?、時系列に注意
※決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています
シルバーゲート・キャピタルとは?
シルバーゲート・キャピタル(Silvergate Capital Corp、ティッカーシンボルは「SI」)は、仮想通貨分野に注力したSilvergate Bank(銀行)の持株会社です。3月8日に任意清算に踏み切ると発表されました。
シルバーゲート・キャピタルは、FTXとその関連会社のアラメダ・リサーチとの取引に関して司法省からの調査を受けており、これを嫌気して、顧客が8,000億円超の資金を引き出されていました。
株価は2022年に160ドルから16ドルへ、2023年には16ドルから2.5ドルへ急落しています。コインベースなどの仮想通貨関連の企業もシルバーゲート・キャピタルとの取引を停止させていました。
資本は充分ではないことから清算となっていますが、預金は全額返済する計画と発表されているため、大きな波乱にはならないか?
直近の決算書の提出は遅延している(悪すぎて提出できない)ため、公表されている最新の決算書は2022年11月7日に公表された2022年9月末時点でのものになります。銀行業務なので、決算書はシンプルで、キャッシュが1,800億円、有価証券関連が1兆1,400億円、返済しなければならない預金が1兆3,200円となっています。2022年9月時点では預金の全額返済はできそうな形ではあります。その答えはいかに。
この、案件のキーワードは「信用不安」です。
シリコンバレーバンクとは?
シリコンバレーバンクは、中堅の商業銀行で、その名のとおり、テック系の取引先が多い銀行です。
シリコンバレーバンクが問題となったのは、資金が枯渇するのではないかとの不安が広がったことです。①投資先である米国債や住宅ローン担保証券(MBS)が、FRBの利上げの影響で評価損が膨らんでいました。①だけなら何の問題もなかったのですが、同時に②テック系企業が赤字を膨らませている一方で、銀行からの借入が難しくなり預金を引き出し始めてしまったのです。この2つが重なり、シリコンバレーバンクは資金を確保するために、含み損がある有価証券(米国債や住宅ローン担保証券)を売却せざるを得なくなり、その結果信用不安と繋がりました。
シリコンバレーバンクは、ちょっと厄介で、預金保護の限度額を超える部分の返済は、現状では未確定とのことです。なお、預金保護額は最大で1口座当たり25万ドルです。
2023年3月8日には増資計画などを発表されましたが、9日に株価は6割下落。信用不安から預金の引き出しが続き、10日に経営破綻しました。あっけなく、破綻しますよね。スピード感が凄い。邪推するなら、優良顧客は先に逃げさせておいて、、、と言ったところでしょうか。
シリコンバレーバンクは、2022年(年度)の決算が2023年2月24日に公表されています。2021年と比較しても、一見そこまで悪化しているようには見えませんが、保有している有価証券の中身が問題でしたね。
リーマンショック以来、銀行規制が厳しくなり、資本の増強が求められてきましたが、こうもあっけなく破綻されると、その規制は何だったのか、疑わしくなります。シリコンバレーバンクが小規模な銀行だっからでしょ?と思われるかもしれませんが、資産規模でいうと、上図のとおり20兆円を超える中規模の銀行(TOP20には入る)です。
この背景はキーワードは「特定の資産クラスの評価減」です。
そして、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)は、一般的な投資であり、シリコンバレーバンクだけの問題ではないことが懸念されます。ただ、ショック状態にはなく、2023年3月10日時点ではそこまでの下落ではなく株式市場は落ち着いています。
次のページでは、リーマンショック時の状況と、2023年以降の予想を検討してみたいと思います。
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