はじめに
・インフレ抑制法案で一番恩恵を受けるクリーンエネルギー関連銘柄の中で
注目されているソーラーエッジテクノロジーズについて検討してみたいと思います。
【ここに注目】
①売上の成長推移と今後の成長余力
②営業利益率の低下と今後の課題
・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。
どんな会社?
ソーラーエッジテクノロジーズは太陽光発電システムの部品を提供する会社である。ソーラーエッジテクノロジーズは、太陽光発電システムにおける発電と管理の方法にイノベーションを起こし、最適化されたインバーターシステムのリーディング企業である。開発及び販売に特化しており、製造は基本的に外部へ委託している。
ソーラーエッジテクノロジーズのインバータシステムは、主にインバータ、パワーオプティマイザー、通信装置(クラウドベースの監視プラットフォーム)で構成されている。
なお、事業割合は低いが、蓄電池システム、電気自動車コンポーネント(テスラは自社生産に切り替え)と、仮想発電所(VPP)などの製品も提供している。ただし、9割が太陽光発電関連となっており、現状の事業ポートフォリオは特化型である。
(補足)インバーターとは、太陽光発電で発電したDC(直流電源)を、家電などで使用できるようにAC(交流電源)に変換させる装置のこと。パワーオプティマイザーとは、低いDC(直流電源)を入力して、高いDC(直流電源)で出力し発電の最適化を図る装置のこと。
ソーラーエッジテクノロジーズの強み、特徴
ソーラーエッジテクノロジーズの強みは、パワーオプティマイザSシリーズ(smart、simple、safe)に体現されている。
スマート(smart:設計の自由度をさらに高め、サイトの発電量を向上。)は、特に優れた変換効率で、太陽光発電の効率化を支援している。
シンプル(simple:配線の簡素化で、より迅速に)は、特に、複数のモジュールタイプにも適応する高い互換性があり、さらに設置業者が作業しやすい設計になっている。設置デモの紹介ビデオがあるが、誰でも簡単にできそう(と思わせてくれる)。互換性が高いことと、設置マニュアルも初心者向けに作成されているため、業者フレンドリーな会社である。
安全(safe:業界初のアーク検出および防止機能を搭載した Sense Connec)は、特に、シャットダウン中に、高DC電圧を触れても安全なレベルまで自動的に低減される。 Sense Connectとは、パワーオプティマイザを常時モニタリングして、不適切な接続と潜在的な誤動作を特定し、アーク(放電)障害の危険の早期検出と軽減を実現している。
なお、ソーラーエッジテクノロジーズは、研究開発を加速させており、下記の通り研究開発費が増加させている。
製品出荷の状況
製品の出荷は堅調である。商業用途は2021年に鈍化しているが、2022年は回復している。住宅用途は2020年に鈍化しているが、2021年以降右肩上がりの成長となっている。
地域別でみてみると、北米よりヨーロッパ向けが伸びていることが分かる(「ROW」はその他)。エンフェーズ・エナジーの分析の際に詳細は記載しているが、今後太陽光発電システムの需要は大きくなると想定されている。また、米国のインフレ抑制法案の制度により、事業者も消費者も恩恵を受ける。このため、今後北米の売上は大きく伸びると見込まれている。
決算書からみる業績と今後
まず、売上は着実に成長している。成長率については、2020年は2%と鈍化したものの、2019年は52%、2021年は35%、2022年は41%(半期分を1年分として推定計算)となっている。
ただし、他の指標(①営業利益率②売上総利益③売上原価④営業キャッシュ・フロー)については、少し注意が必要と思われる。
まず、①営業利益率が徐々に低下している。2018年は15%あった営業利益率が、直近の2022年は6%となっている。これは米国の政策が原因となっている。2019年まで太陽光発電に関する税額控除があったが、投資税額控除が段階的に縮小(工事着工が2019年の場合30%から2020年の場合は26%へ、2021年の場合は22%へ)される予定であったため、2020年1Qまでに駆け込み需要があった。
駆け込み需要の反動により、2020年は前年と同程度の売上に留まり、営業利益率は落ち込んでしまった。売上は増加しているが、営業利益率が低下してきているのは、同じ太陽光発電関連のエンフェーズ・エナジーも同様であるが、エンフェーズ・エナジーは2022年の営業利益率は回復したのに対し、ソーラーエッジテクノロジーズは回復するどころか、さらに営業利益率が低下してしまっているのが気になる。これは、研究開発費を増加させていることも一因ではあるが、販売価格の交渉力が落ちていることが大きな要因であると考える。②売上総利益率について直近の数値でみると2021/2Qに32.5%であったが、2022/2Qには25.0%となってしまっている。
売上総利益率が落ち込んでいるのは、③売上原価が増加していることも影響している。2022/2Qの決算書では、原価が増加した要因として、特に次の3点が挙げられている、1.物流の混乱で38億円の増加要因、2.設置台数の増加に伴う保証費用(引当金)の増加23億円、3.メキシコでの製造委託拠点立ち上げ費用22億円。1.3.については、一時的な費用であるが、2.については、引当率の増加(製品保証を25年となっており、設立が2006年で最長でも製品が16年しか経過していないため、思わぬ保証金額とならないか。)は要注意だ。
さらに注意したいのが、④営業キャッシュ・フローが、2022/2Qに▲85億円となっていることである。大きな要因は、税引前利益が落ち込んだことと、営業債権の回収が遅れていることである。この営業キャッシュ・フローが赤字なのは、問題(いわゆる黒字倒産になる可能性)であるため2022/3Qで回復しているかは注視したいところである。
営業キャッシュ・フローが赤字なのは気になるところだが、財務状況は悪くない。2022/2Qの総負債が1,133億円なのに対して、流動資産のみで2,283億円あるため、上記の営業キャッシュ・フローの赤字程度であれば、しばらくは問題ないだろう。
株価と投資タイミングを検討してみる
株価は2020年まではゆっくりと上昇してきたが、2020年以降急激に上げて、2021年からは激しい上下を繰り返している。ただし、上下動は200ドルから400ドルのレンジ内での動きとなっている。
PERが100倍程度となっている点が気掛かりだ。確かに売上が成長しているが、利益の成長が伴っていないため、PERが徐々に高くなってしまっている。
投資するタイミングだが、少し待ちたいと思う。個人的には、営業利益率が上向いてからだと考えている。確かに、上述のようにソーラーエッジテクノロジーズ製品の強みはあるものの、圧倒的に他社を排除できるものではなく、若干価格競争になってしまっている恐れがあるからだ。太陽光発電銘柄が欲しいのであれば、PERが高いのは変わらないが、エンフェーズ・エナジーの方が勝率が高いと思われる。
おわりに
・最後まで、お読みいただきありがとうございます! 他のクリーンエネルギー銘柄はETF「ICLN」に一覧があります。 ・この点をもう少し詳しく解説して欲しい、優先して解説して欲しい他の会社などありましたら お気軽コメントください。お待ちしています。 ・シリーズ化してお届けしていますので、シェア、コメントなどで反応してもらえたら、 更新の励みになります。 ・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。
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