糖尿病機器に期待!アボットラボラトリーズ(ABT)を3分解説/公認会計士によるここだけの徹底分析/お宝株発見で寝るだけ投資

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ヘルスケアセクター
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アボットラボラトリーズの将来性

 上述の4つのセグメントをご覧頂いて分かるように、アボットラボラトリーズは堅実に稼げる市場で、寡占状態を作りだすことに成功している。特に、診断薬セグメントと医療機器セグメントの参入障壁は高く、より寡占化が進むことが想定される。

 ここで、診断薬セグメントはCOVID-19検査関連が大きな売上であった。COVID-19が収まりつつある現状において、COVID-19検査関連の売上が剥落した場合の影響を検討しておく必要があるだろう。

 まずは、アボットラボラトリーズ全体の推移を見てみよう。売上の伸びはデコボコしているものの、5年間の平均では10%の成長率がある。特筆すべきは、2017年に6%であった営業利益率が、右肩上がりで伸びており、2021年には20%となっている

出所:会社資料より筆者作成

 次に、セグメント別の利益率をみてみよう。(なお、会社の決算書の「Operating Earnings」は共通費や減価償却費が引かれていないため、会社全体の営業利益率とは若干乖離がある。) 医薬品セグメントは20%程度、医療機器セグメントは30%程度をキープしている。栄養補助製品セグメントの利益率が落ちているのは、小児用ミルクの生産停止などがあった(現状は回復)ことが原因である。この点、2022/3Q以降の利益率が回復しているのかは注視しておきたい。

出所:会社資料より筆者作成

 さて、ここで本題のCOVID-19検査関連が入っている診断薬セグメントの利益率を見てみよう。2019年の24.8%から2020年34.5%、2021年40.0%と利益率がジャンプアップしている。このセグメントの利益率の向上が会社全体の利益率を押し上げていることが分かる。注目したいのが、COVID-19が落ち着いてきた2022年になったもその勢いは衰えず、2022/2Qでは利益率がさらに上がり45%になっている。

 COVID-19検査関連売上は、2021 年上半期は約 3500億円で、診断薬セグメントの約5割を占めている。このCOVID-19検査関連売上の影響を除くと、総売上高は1.7%の増加(為替の影響を除くと5.9%増加)となっている。この事実から言えることは、COVID-19検査関連売上がなくても、アボットラボラトリーズは成長しているということだ。COVID-19の流行は読めないこと、為替の変動もあり、業績の見通しは難しいとされているものの、しばらくは問題ないと言える。 

他の決算数値と配当の継続について

 他の決算数値に異常がないか検討しておく。まず、財務状況はかなり良好である。特に総負債が3兆7千億円に対して、総資産が7兆4千億もある。なお、のれんが2兆2千億円あるため、会計処理の変更に伴いのれんが償却されることとなった場合、利益を圧迫する可能性があるため、留意が必要だ。

 営業キャッシュ・フローも上期で4,475億円あり、問題ないだろう。稼いだキャッシュをほとんど使用するところがなく、設備投資と借入の返済にそれぞれ700億円、自社株買いと配当の支払いに4,000億円使用しており、ほとんど株主還元に使っている。

 アボットラボラトリーズはS&P 500配当貴族指数(25年連続で毎年配当を増やしている企業)の構成銘柄である。驚きなのが、1924年以来、394回連続の四半期配当を行い、50年連続で配当金の支払いを増やしてきていることだ。

 稼いだキャッシュ・フローの使い道がなく、2400億円も自社株買いを行っているため、配当の継続については、全く問題ないだろう。ただし、配当利回りは1.8%程度のため、高配当銘柄とは言えないだろう。

株価について

 ヘルスケアセクター全体に言えることだが、世界人口が増加し、高齢化が進んでいる状況では、概ね成長が期待できると言える。アボットラボラトリーズは新薬の開発を行っていないため派手な成長はないかもしれないが、堅実に成長することが見込まれる

 個人的には、糖尿病関連売上(医療機器セグメント)が伸びてくると想定している。なぜなら、現在の世界の糖尿病人口は5億4千万人であり、 成人の10人に1人が糖尿病となっている。また世界の糖尿病人口は、2030年までに6億4千万人 (成人の11.3%)に、2045年までに7億8千万人 (成人の12.2%)に増加すると予測されているため、市場が増加することが見込まれるからだ。

出所:楽天証券ツールにより筆者作成

 株価は、直近では軟調に推移している。COVID-19関連銘柄あるあるだが、COVID-19以前より株価が下がっている銘柄が多い。この点、アボットラボラトリーズはCOVID-19以前は90ドル付近であったが、現状はCOVID-19以前よりはまだ上の位置にいる。確かにCOVID-19関連銘柄ではあるが、セグメントポートフォリオはバランスが良く、COVID-19関連売上がなくなっても、売上の成長は継続されているため、COVID-19終結宣言を理由に売られた時には、良い買い場であると言える。

 PERは2017年の50倍程度から右肩下がりになっているため、利益の増加に対して評価されていない(注目されていない⇒チャンスがある)と言える。現在のPERは25倍のためS&P500の平均等と比較すると若干高いくらいであろう。

おわりに

  • 最後まで、お読みいただきありがとうございます!
  • この点を申し少し細かく検討して欲しいや、 他の企業を分析して欲しいなどありましたらお気軽にお問い合わせください。
  • 米国株の分析をしているので、お好みの個別銘柄と出会えたら幸いです。
  • 個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。

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