チェックリストの説明6.~10.
「6.ビジネスモデルに参入障壁がない。」:成長企業や生き残る会社は、その会社独自の強みがあります。かりに、他の会社が実施している事業でも、新しい技術や、何かしらのコンテンツがあれば良いと考えます。また、やとうと思えば誰でもできそうなビジネスモデルであれば、より資金力のある会社が実行すれば駆逐されてしまいます。
▲×プログリットのビジネスモデルをよ~く見たのですが、強みが理解できませんでした。 「事業計画及び成長可能性に関する事項の開示」に強みが4つ記載がありますが、 ???です。
「7.事業が成長していない/市場が小さい。」:これはとても重要な事です。例えば、半導体セクターには多くの競合がいますが、米国が国策で半導体セクターを盛り上げていたり、将来半導体がない世界は現在では見通せません。そのため、半導体セクターは成長し、市場も拡大しているため、半導体企業は人気があります。
この点、プログリットは、英語学習に特化していますが、英語の学習が必要な層はどの程度いるのでしょうか(安価で効果的なプログラムも多い)。また英語圏の方には必要のないサービスですが、日本以外への展開はどのように考えているのかも不明です(「事業計画及び成長可能性に関する事項の開示」に記載なし)。また、少し未来の話をすると、英語が不慣れなかたでも簡単にアプリが通訳してくれる日が来るため(今も精度は高くないが、アプリはある)、市場はシュリンクしていくと想定します。
×プログリットの事業は成長していない、市場もシュリンクしている
また、成長性については、決算書にも表れている。2020年8月の年度の決算において、売上は21億8千万円でしたが、2022/3Q(9か月分)の売上累計は16億4千万円で、12か月換算すると21億9千万円です。2021年は19億8千万円でしたので、そこからは回復していますが、2年前からほとんど成長していないことが分かります。
「8.ダウンラウンドしている。」:前回の株価より低い価格で調達することをダウンラウンドと言います。
プログリットの上場が2022年9月29日で、直前期の2021年8月と申請期の2021年10月に第三者割当増資を行っています。IPOに関与された方ならピンとくると思いますが、申請期に資金調達するなんて、、、。なお、上場の2期前の直前前期に入ってから第三者割当増資を実行する際には、株価が正しいかの株価算定書を入手することが、証券会社等から求められます。
問題なのは、上場の1年前に1,502円で適正とされた株価が、1年も経たないうちに公募価格が730円とされたことです。つまり、2022年8月と10月に出資した方は、いきなり株価が半額になってしまったのです。前回の株価より低い価格で調達することをダウンラウンドと言います。1,502円が正しいのか、730円が正しいのかは分かりませんが、私がこれに関与していたら、恥ずかしくて隠れます。初値も1,180円で一度も1,502円をタッチしていないので、1年前に出資された方は含み損が生じている状態です。
上場直前の資金調達で、1億3千万円を調達しているので、よほど資金繰りに困っていたと思われる。
×プログリットはダウンラウンドしている(1,502⇒730)
「9.CMに有名人を起用している。」:サービスが認知されることは必要です。そのツールとして有名人を起用することは否定はしません。ただ、売上を回収できるくらいの広告費用で抑えないと、莫大な損失につながるので、要注意です。広告費用を使いすぎて、苦しんだ会社を何社も知っています。
プログリットは本田圭佑さんをCMキャラクターに起用しているようです。また、今回プログリットを知るきっかけになったのは、弘中アナウンサーの結婚のニュースだったので、これもある意味広告と言えるでしょうか(無料なので、有用)。
×プログリットはCMに有名人を起用している。
「10.よく分からない勘定科目が入っている」:何個か会社の決算書をみたことがあったり、業績のサマリーなどを見ると、そんなにイレギュラーな科目は出てこないことに気づきます。変な科目が入っていたら、あ!、この会社やったのね、、ってなります。
さて、プログリットの決算書を眺めてみると、色々とツッコミどころはありますが、一番びっくりとしたのが、2021年8月期の「役員報酬返納額」170万円です。役員が変なことをやらかしたということではないと思いますが、経営状況が悪かったから、自主返納したということでしょうが、170万円か、、、。
△よく分からない勘定科目が入っている。
チェック結果
- OK監査法人が大手ではない。
- OK主幹事証券証券が馴染みのないところだ。
- ×主要なベンチャーキャピタルが入っていない。
- ×ストックオプション(新株予約権)を発行しすぎている。
- ×営業キャッシュ・フローが赤字だ。
- ×ビジネスモデルに参入障壁がない。
- ×事業が成長していない/市場が小さい。
- ×ダウンラウンドしている。
- ×CMに有名人を起用している。
- ×よく分からない勘定科目が入っている。
私がプログリットを勝手に採点すると、80点/100点となりました。もちろん点数が高い方が、近づいてはいけない会社ということですよ。念のため。
(個人的な妄想です)プログリットはダウンラウンドしてでも、この時点で上場するしかなかったのかと思います。事業が成長しないのであれば、投資家は見向きもしません。コロナで在宅が増えたので、英語学習も盛んになりましたが、コロナが落ち着けば需要も減っていくため、ジリ貧が見えていたと思われます。ここで上場して、知名度をあげつつ、ある程度の資金を回収したかったのでしょう(IPOに群がる個人を犠牲にしてでも)。
上場している会社は、それなりにスクリーニングにかけられているため、ここまで酷くはないと思いますが、ベンチャー企業への投資を促す「投資するなら〇〇〇~♪」などを通じて投資する場合は上記のチェックリストを使って判断することをおススメします。
なお、「3.主要なベンチャーキャピタルが入っていない。」が一番重要で、ベンチャーキャピタルの審査に落ちたか、見向きもされない会社が調達する先が、〇〇〇や個人となるので、その点注意していただければと思います。ベンチャー企業で上手くいく会社は3/100と言われていますが、ベンチャーキャピタルが投資しない会社の成功確率は3/1000と思って頂いた方が正しいです。
ベンチャー企業を支援している身なので、ベンチャー企業の成長を応援していますし、変にベンチャー企業の評判を貶める気もありません。投資業界が荒らされないため、また投資初心者を守ることを主眼とした記事とご理解ください。
それでは、個別株のセレクトを楽しんでください。
おわりに
・最後まで、お読みいただきありがとうございます! ・この点を申し少し細かく検討して欲しいや、 他の企業を分析して欲しいなどありましたらお気軽にお問い合わせください。 ・米国株の分析をしているので、お好みの個別銘柄と出会えたら幸いです。 ・個別銘柄の記載がございますが、投資は自己責任でお願いいたします。
コメント