はじめに
・連続増配で大人気のユナイテッドヘルスグループについて検討してみたいと思います。
【ここに注目】
①米国の医療環境(保険加入の義務付け)が追い風
・決算書と比較しやすいように、1ドル=100円として記載しています。
どんな会社?
ユナイテッドヘルスグループはヘルスケア/保険会社の最大手である。セグメント(事業内容)は、①UnitedHealthcare、②OptumHealth、③OptumInsight、④OptumRxの4つに分類され、事業を展開している。①UnitedHealthcareにより運営される医療保険を通じた医療給付と、2011年に立ち上げたOptum②~④により運営されている医療サービスの2つのビジネスモデルからなる。Optum(オプタム)は名称からだと事業内容が想像つかないので、少し解説しておこう。
②OptumHealthは、1億人の消費者に、最適なケア環境を提供する全米規模のヘルスケア・デリバリー・プラットフォームを通じて、ヘルスケア・ウェルビーイングを提供している。これには、遠隔による在宅ケアも含まれる。
③OptumInsightは、医療システムにより、データを分析/調査し、臨床・管理・財務のプロセスを容易にするサービスを消費者のみならず、医療従事者、政府や会社などにも提供している。
④Optum Rxは、67,000以上の小売薬局のネットワークを通じて、薬局管理サービス(PBM)を提供している。推奨医薬品リストを作成および管理して消費者に提供するとともに、製薬会社との契約、値引き交渉などを行う。
ユナイテッドヘルスグループを一言でいうと、医療費関連を全てカバーしている会社と言える。すなわち①UnitedHealthcareにおいて、保険料を徴収し、医療費を給付、②OptumHealthにおいて、医療プラットフォームを提供し、③OptumInsightにおいて、データ分析し、④Optum Rxにおいて、医薬品を提供している。
米国の医療環境について
ユナイテッドヘルスグループの強さを理解するには、日本とは大きく異なる米国の医療環境を知っておくことが重要であるため、その状況を簡単に見ておこう。
まず、日本では、みんな基本的に保険に加入しており、よほどの事がない限り病院に行くことができる。これは、国民皆保険制度と言われている。一方で、米国では保険は職場を通してか、個人で医療保険会社と契約することとなり、公的保険で賄われているのは、65歳以上の高齢者やハンデがある方向けのメディケアと、低所得者向けのメディケイドのみである。
保険に入っていない場合は、医療費が保険でカバーされないため高額な医療費が請求されるか、医療手当を受けないこととなっていた。これを変えようとしたのが、オバマ元大統領でした。通称オバマケアにより、低所得者向けのメディケイドの対象範囲が拡大して、補助金が支給されるため、保険に加入できる方が増加した。また同時に、米国民や永住者なども医療保険の加入が義務付けられることとなった(違反すると罰金)。
これにより、無保険者は約5,000万人から約1,000万人まで減少しました。この結果、保険の加入者は、職場を通して加入する人1億7,500万人、個人で加入する人1,400万人、メディケアで加入する人2,400万、メディケイドで加入する人7,000万人と大幅に増加することとなった。
保険加入者が増加するということは、ユナイテッドヘルスグループの市場が拡大していることを意味する。
次に特徴的なのが、日本であればどこの病院でも手当を受けることができる(一部紹介状などの慣習はあるが、、)が、米国に関しては、保険会社と提携している医師に手当してもらうというのが通常である。そのためOptumHealthのようなプラットフォームのネットワークが重要となる。間違って提携していない医師にかかってしまうと、法外な治療費が請求されてくることもある。
事業別ポートフォリオと営業利益率
①UnitedHealthcare、②OptumHealth、③OptumInsight、④OptumRxの事業毎に、収入の内訳が開示されている。これを分析していみると面白いことが分かる。保険料収入は①UnitedHealthcareだけかと思っていたのだが、②OptumHealthの6割程度が保険料収入となっている。そして、①~④の収入の集計の結果、ユナイテッドヘルスグループ全体の事業ポートフォリオは、8割が保険料収入となっていることが分かる。
また、営業利益率について見てみると、事業の大部分を占めている①と②の営業利益率は8%程度である。飛びぬけて営業利益率が良いのは、③OptumInsightであり、ここ数年営業利益率24%以上をキープしている。ただし、③OptumInsightの収入はユナイテッドヘルスグループ全体の4%未満であり、全体の利益率向上にはそこまで寄与していないのが現状である。
ユナイテッドヘルスグループの営業利益率については、正直高いとは言えない。この状況をどのように捉えるかということであるが、おそらく営業利益率は同水準を継続するものと見込まれる。ウェルビーイングを社是に掲げる企業は、大きな利益を追求するのではなく、消費者の心と身体の健康を追求しており、利益より収入規模や契約数が重視されることが多いからだ。
ここからが本番、次ページは、将来性(デジタルヘルスケアベンチャーの買収)、株価など。
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